幻想的な亜熱帯雨林を探索する

 世界にも類をみない自然と生態系が奇跡のように息づくオーストラリア。世界遺産に登録されている大自然は、複合遺産も含めて計16件にのぼります。

 なかでもゴールド・コーストから気軽に行ける世界遺産としておすすめなのが「オーストラリアのゴンドワナ多雨林地域」。

 青く輝く海が広がる市街から車で約1時間。のどかな牧場地帯を抜けて目指すは、世界遺産の一部となっているスプリングブルック国立公園のナチュラル・ブリッジ地区。

 数億年前にはアフリカ、南米、南極、インド亜大陸などとともにゴンドワナ超大陸の一部だったオーストラリア。

 その南東部には、その時代にまで歴史をさかのぼる貴重な多雨林地域が広がっています。

 さて、ナチュラル・ブリッジの入り口に到着。週末とあって、小さな子どもたちと一緒に散策を楽しむ家族の姿も。

 歩きやすいウォーキングトラックが整備されているので、靴もスニーカーなどでOK。特別な準備は必要ありません。

 鬱蒼とした雨林に入ると、そこは幻想的な雰囲気。数千万年という時の流れと、地殻変動のダイナミズムに思いを馳せれば、この森の圧倒的な凄さをさらに実感できます。

 壮観だったのが〈絞め殺しのイチジク〉。鳥によって運ばれた種子が木々の枝で発芽し、宿主となった木を絞め殺すように巻き付いていく植物で、木々の世界にも “弱肉強食” があることに驚きます。

 最大の見どころが、地区の名前にも冠されている〈ナチュラル・ブリッジ〉。気が遠くなるほどの長い歳月をかけて生まれた、文字通り “自然の橋” です。

 アーチをくぐると洞窟が広がっていて、降り注ぐ光とともに流れ落ちる滝が、神秘的な光景を作り出しています。

 さらにこの洞窟は、“土ボタル” が生息していることでも知られています。

 明るい日中は見ることはできませんが、夜になると岩肌にほのかな光が。

 この土ボタルを観賞するツアーもあり、「ツアーゴールドコースト」が開催のものは日本語ガイドが同行。多雨林の生態系から南半球の星空まで、知識豊富なガイドさんが案内してくれます。

 ビーチリゾートとしてお馴染みのゴールド・コーストですが、個性的な動物たちとふれあえる自然保護区、野生のイルカに会える島、さらに神秘的な亜熱帯雨林と、オーストラリアの魅力がぎゅっと詰まったエリアなのです。

2022.06.20(月)
文=矢野詔次郎
写真=鈴木七絵
協力=オーストラリア政府観光局