春という季節はデンジャラスだ。「あ~春だなあ」と思うことで、自動的に心が欲しているものも一緒に言葉となって出てくる。困ったスプリング・オートマチック!

 この間も作業が終わったとき、何の意識もせず

「あ~春だなあ。甘いモン食べたい」

 と勝手に呟いてしまい、自分で「エエッ、私今甘いモン食べたいの!?」とびっくりした。

 これと同じ現象が音楽でも起こる。これまで忘れていたのに、春になると、

「あー、○○聴きたい……」

 などと独り言が勝手に出る。そしてびっくりしながら「うわ、そうそう、よく思い出しました!」と自分で自分を褒める、ということがよくある。とんだひとり芝居であるが。

 では、そんな私の「春になると自動的に聴きたくなるアーティスト」をご紹介しよう!

無意識に口ずさむ率が異常に高い! 春の具現化「スピッツ」

 一番手はスピッツである。春の木漏れ日のように草野マサムネさんの声はやさしくて心地いい。「春のうーたー♪」の高音が雲を突き抜けていきそうな30thシングル「春の歌」をはじめて聴いたときは、ジャストフィット過ぎて気絶しかけた。

 外が鉛のような曇天だろうが土砂降りだろうが、聴けば心には青空が広がり、ツバメが舞う。それがスピッツ楽曲! そのパワーの強さは、もう「春声」を超え「春そのもの」と言ってもいいかもしれない。

 スピッツが「春の声アーティスト」な理由はもうひとつある。みなさんも経験したことはないだろうか。タンポポや桜などを愛でつつボーッと散歩しているとき、無意識に

「♪ルーララ 宇宙の風に乗る……」

 と「ロビンソン」を歌っちゃってる現象!

「♪ふーんふふん、うちゅ~うの、ふふふふんふーん……」

 と鼻歌でふんふんロビンソンするパターンも込みで、スピッツファン以外でも、経験者はかなりの数いると思う。

 私はこれを「なぜか知らねどロビンソン問題」と名付け、毎年春の研究テーマとしている。

 今のところ、「ルーララ」が異常に春感が高く口ずさみやすいこと、また続きの歌詞「宇宙~の風に乗~る」の浮遊感が、春の浮かれた気分とリンクしやすく、自然と口からスルッと出てしまうのでは……と考えている。

 どちらにしても、春とスピッツは鬼に金棒、虎に翼。相性が良すぎて、心浮かれるどころか、空も飛べるはず!

2022.04.02(土)
文=田中 稲