人生の大事な場面には「生理周期のコントロール」も

 生理が来ないのも困るけれど、月に一度「生理による不調」が定期的に発生するのも、女性にとっては悩ましい状況だ。生理前にイライラしたり、集中力が低下したり。経血を排出しようと子宮が収縮するために、腰や下腹部に痛みを覚えることもある。

「たとえば大学受験中の方は、長期に渡って複数の学校を受験しますから、生理が重なってベストなパフォーマンスを維持するのが難しいことがある。例年1~2月は入試と生理周期をずらしたいと希望される親子連れで、婦人科も混む傾向にあります。このように人生の大事な場面において、生理による不調をコントロールするのは1つの選択肢であると思います」

 生理周期のコントロールには、低容量ピルを用いることが多い。低容量ピルとは、50マイクログラム未満の黄体ホルモンと卵胞ホルモンを主成分とした薬剤のこと。ホルモンの血中濃度を上げることで、脳から排卵を促す信号を抑制する働きがある。一般的には避妊薬として知られるけれど、月経前のイライラや生理痛などPMS(月経前症候群)を軽減する効果もある。

「第一志望校の受験日から生理を外すことは可能ですが、ピルの服用はできれば半年前くらいから始められると理想的です。副作用はほとんどないものの、ゼロとはいえませんし、“自分が最も良いパフォーマンスを出せるところ”を知っておくことも大切なんです。そういう意味でも、自身の生理周期と体調の変化に向き合うことが重要です」

PMS予防のために、生理前後の心身と向き合う

 自身の生理周期と、それに連動した心身の変化を知ることは、生活の質を向上させることにも繋がるという。

「たとえば、生理前にイライラしてうまくいかないとわかっているなら、重要な仕事は避けられるなら避けたいし、デートの予定は入れないほうがいいでしょう。また、生理前は幸福ホルモンとよばれるセロトニンが減少し、気分が落ち込みやすくなります。そんな時は日光を浴びたり、軽い運動をするなど、生活の中でセロトニンを増やす工夫を取り入れるのもいいですね」

 とはいえ、社会生活を営むうえで、自分で予定が調整出来ない場合は「薬の力を借りることも視野に入れて」と福山先生は語る。低容量ピルには、前述の通りPMSを軽減する働きが期待できるからだ。

「イライラを引き起こす要因は、排卵後に分泌量が増える黄体ホルモンです。排卵を一旦止めてホルモンのダイナミックな変化を抑制すると、イライラ感の軽減に繋がります。また排卵しないと子宮内膜の厚みが薄くなるため、生理時に子宮が内膜を押し出す力も少なくて済みます。つまり、生理痛の軽減に繋がるんですね」

 ひと昔前は“生理痛は我慢するもの”という風潮も存在したけれど、今はピルに関する理解が進んでいるという。中学生くらいの娘の母親世代だと、自身でピルを服用した経験を持つ人が一定数おり、親子で婦人科に来院する人も少なくない。

「PMSがひどい人は、責任感が強かったり、自分を追い込みやすいなど“生真面目な人”が多い傾向にあります。普段頑張っているからこそ、生理の辛さを我慢せず、ピルの服用も選択肢の1つとお考え頂けたらと思います」

●お話を聞いたのは……

福山千代子 
MET BEAUTY CLINIC院長

日本産科婦人科学会専門医。生理のトラブルや更年期障害など、あらゆる世代の女性の悩みに、20年以上真摯に向き合っている。親身なカウンセリングで、多様化する女性の悩みに合わせ、ホルモン補充療法、漢方薬処方、点滴などさまざまな角度から治療法を提案。

MET BEAUTY CLINIC

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フェム・ヘルス研究室

女性の心身の仕組みを理解して、快適に暮らすめための連載。「フェムテック」アイテムの紹介をはじめ、PMS、月経、更年期などの女性のしんどさを和らげて、生活の質を上げる方法を考えます。

2022.03.06(日)
文=宇野ナミコ