④『ブランクスペース』

 ごく普通の高校一年生、狛江ショーコと、頭の中で想像したモノを現実世界で透明な状態で具現化することのできる同級生の片桐スイ。藤子・F・不二雄的なSF(すこし・ふしぎ)の世界観で展開される作品です。

 ショーコは元気で真っすぐな少女、そのかわり少し不器用でストレートなところがある。一方スイは特殊な能力があり、それもあってか内向的。学校にもうまく馴染めない。ある雨の日をきっかけに二人は仲良くなり、物語が動き出す……。

 とにかくスイちゃんが間違った方向に行かないでほしい! ショーコ頼むぞ! と。はじめは読んでいましたが、物語はあれよあれよと進んでいき、緊張感を漂わせてきます。いったいこの先どうなっていくんだ、と今一番先が読みたい漫画です。

 結末を早く知りたいけど、世界がどんどん開けていくこの物語と長く付き合いたい、そんな気持ちにさせてくれる漫画、必読です。

『ブランクスペース』

熊倉 献 著
ヒーローズコミックス

⑤『ひらやすみ』

 場所は東京。平屋で生活をするフリーターと学生の物語。それだけと言えばそれだけなんですが、漫画にはすごく充実した何かが描かれています。

『大東京ビンボー生活マニュアル』(前川つかさ著)じゃないけど、大都会・東京にもRPGのセーブポイントみたいに、ぽっかりと時空のはざまに取り残された安息地があるのだと嬉しくなる漫画です。目を凝らせば東京にはこんな場所が、思っている以上にたくさんあるのかもしれない。というかあってほしい。

 なんでこんなに自分はアクセクしているんだろう、と思い悩むよりも先に、開けば飛び出てくる癒しのオーラ。もう真造圭伍は職業白魔導士、ヒーラーですね、間違いなく。

 心の常備薬として、この漫画は是非リアル書籍で手元に持っていてほしい! それぐらいおススメです。

『ひらやすみ』

真造圭伍 著
小学館

⑥『海が走るエンドロール』

 最後は『海が走るエンドロール』です。主人公は夫に先立たれた65歳の女性・茅野うみ子。久しぶりに映画を観に行ったときに美大の映像学科生の海と出会ったことをきっかけに映画を撮りたいという欲求がふつふつと湧き上がり、美大に入学、映画製作の夢に向かい、カメラを回し始める。

「何かを始めるなんていうことに年齢の制限なんてない」なんて使い古された言葉ですが、わかっていてもなかなかできないもの。うみ子さんに比べればまだまだ若い自分でも「どうせ」と諦めてしまいがちです。

 そんな私たちの背中をポンっと押すほど押しつけがましくなく、後ろから温かく見守る感じが心地よい漫画です。疲れてくると前を向くことすら億劫になるこの時代、前を見て自分にとっての「何か」を見つけてみるのも良いかもしれません。

『海が走るエンドロール』

たらちねジョン 著
BONITA

2022.02.12(土)
文=CREA編集部
写真=今井知佑