ホルモンに大きく影響される私たちの体を理解して、快適に暮らすめための連載!

 生理にまつわる辛さや悩みは、人それぞれ。ひとりで我慢せずに医師に相談すれば、もっと快適に暮らせる人も多いはず。今回は、受診すべき目安や、ピルのメリットについて産婦人科の先生に伺った。


 女性の子宮はライフスタイルの多様化により、大きな変化に直面している。

 日本では、晩産化、少子化が進み、また子どもを持たない人生も当たり前の選択肢のひとつとなった。仮に12歳で初潮を迎え、妊娠・出産せずに50歳で閉経したとすると、年12回として、生涯で456回もの生理を経験することになる。かつての日本では30代までに4~5人産むこともごく普通のことだったが、そのころの生涯の生理はわずか約50回だったという調査結果がある。

 現在では、出産をするにしても、晩産化、少子化は進む一方。その分、回数が激増した生理といかに上手く付き合うかは、女性のQOL(生活の質)に大きく関わる問題だ。埼玉医科大学病院産婦人科助教の高橋幸子先生に心得を伺った。

過去の自分の生理と比較して辛ければ受診を

「子どもを産む、産まないという考えとは関係なく、卵巣は基本的に毎月真面目に排卵し、子宮は妊娠に備え着床のためのベッドを毎月リメイクしては生理という形で排出しています。本来、妊娠や授乳を繰り返すことで卵巣や子宮は一定期間休むことができるのですが、妊娠しなければずっと働き詰めの状態。生き方の選択肢は増えても、体の機能は古代から変わらないため、そこがうまく合致しないのが現代女性の特徴です」(高橋先生)

 現代女性は生理と向き合う期間が長くなりがちだからこそ、もっと気にかけてほしいと先生は言う。

「なかには生理痛が辛い、不正出血がある、生理の量が多い、生理がしばらく来ないなどの悩みを抱える方もいらっしゃるでしょう。生理の悩みは我慢してやり過ごすのではなく、次に掲げる基準を目安に、ぜひ婦人科を受診するようにしてください」

①1回の生理で痛み止めを飲むのが「3回まで」を超えて、4回以上飲んでいる場合
②1カ月に「3回以上」の不正出血がある場合
③日中、夜用のナプキンが「3時間」もたず、漏れて洋服が汚れてしまう場合
④生理が「3カ月以上」来ていない場合

「これらを“3の基準”と呼んでいます。①は子宮内膜症の可能性があり、②の不正出血はホルモンバランスの乱れや子宮頸管ポリープによっても起きますが、子宮頸がんが潜んでいる可能性も否定できません。③は子宮筋腫が原因として考えられます」

 ④の無月経については、卵子を包む卵胞の発育に時間がかかり、なかなか排卵しない「多嚢胞性卵巣症候群」であることが多いという。排卵日が特定できないうえ、いつ生理がくるか分からず、洋服を突然汚してしまうかもしれないという不安を伴う。

 どれもQOLに大きく関わるが、特に②と③は早めに検査につなげてほしいと言う。③の原因として考えられる子宮筋腫は子宮にできる良性のコブだが、妊娠を希望する場合、コブの発生場所によっては受精卵の着床を妨げ不妊症の原因にもなる。さらに、筋腫があると子宮自体が大きくなり周辺の臓器を圧迫し、便秘や頻尿、腰痛の原因にもなりやすい。

「子宮筋腫はすぐに治療が必要なわけではありませんが、筋腫の有無を知っておくだけでも、いざ妊娠したいとなったときなど、その情報が役に立ちます。また、生理痛や経血の量は人と比べようがないものの、30~40代になれば、過去の自分となら比較できますよね。“3の基準”を頭の片隅に置きつつも、明らかに昔より痛い、量が多いと思ったら婦人科を受診してください」

2021.10.16(土)
Text=Tomoko Uchida
Illustrations=Ayumi Takahashi

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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