今、勢いに乗る「少年漫画」は一体どこが新しい?

 「少年漫画」「少女漫画」というジャンルが定着してから幾星霜……。時代とともに、これらの言葉が持つ意味は変容してきた。いまや、「少年漫画」「少女漫画」の定義は、「少年・少女向けの漫画」とは言い切れないだろう。作品によっては、成人した20歳以上の世代のシェアが圧倒的に高いものも多く見られ、各作品の「表現の幅」も、大きく変わりつつある。

 もちろん、これは“今だけ”の現象ではない。あくまで一例だが、これまでも『ドラゴンボール』に『ジョジョの奇妙な冒険』、『SLAM DUNK』や『るろうに剣心』、『名探偵コナン』『鋼の錬金術師』『DEATH NOTE』『進撃の巨人』等々――多士済済な傑作群が“時代のにおい”を感じ取りつつ、“時代を動かすオリジナリティ”も発揮し、新たな潮流を生み出してきた。

 つまり、その時代ごとのヒット作が、「少年漫画の領域を拡張」してきたということ(アニメの“地位”の向上や、様々な副次的な要因も大きい)。社会現象化した『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』も、先達が作った流れの中から生まれてきた作品であり、その中で個性を輝かせ、次世代に新たな可能性を示してきた。

 では、いままさに勢いに乗りつつある新連載の作品群は、どんな“新鮮味”を持っているのだろうか? 本企画では、「少年漫画編」「少女漫画編」の2回に分けて、従来のイメージにとらわれない新作を紹介していきたい。第1回目の「少年漫画編」では、「年齢」「性別」の観点から、現在の潮流を考察していく。

変化① “アラサー主人公”の活躍も珍しくない

 まずは、「少年」にも深く関わる、主人公の年齢について。少年漫画といえば、多くの場合主人公は高校生から20代前半の年齢が多いのではないか。「少年」の定義にも諸説あり、14歳まで、18歳まで、未成年者全般等々……まちまちではあるため、10~20代前半の主人公は「少年」の範疇に入る読者から見て等身大、ないし近い存在であるといえる。

 『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の連載開始前、作者の和月伸宏氏が当時の担当編集者から「少年誌の主人公で30歳越えはどうなのか」とNOを出されたというエピソードが示す通り、おおよそこの範囲に収めることが少年漫画の不文律といえるかもしれない(『るろうに剣心』の主人公・緋村剣心の年齢は、最終的に28歳に落ち着いた)。

 また、『銀魂』の主人公・坂田銀時の年齢は、連載終了後に27歳(初登場時)と公表。作者の空知英秋氏は、「初代担当に『読者が引くので言っちゃダメ』と口止めされてたんですが、もう終わったんで言います」と説明している。

2021.07.03(土)
文=SYO