「今は自分で“自分らしさ”を見つけている途中」


――退団されてから約2年、振り返ってみていかがですか?

 在団中は、役はいただくものであって、自分で選択することはありませんでした。

 「この歌を踊ってください」「このダンスを踊ってください」と、限られた中で自分をプロデュースしてきました。退団してからの2年を振り返ると、新たな道に進んでいる中にも、やはりこれまでいた世界の余韻もあり、“延長している”ような部分があったように思います。

 2年目を迎えて今思うことは、自信を持って「私はこうです」と言える看板やプロフィールのようなものを、これからは作っていきたいと思っています。

 その姿を見ていただいて、何か新しい気持ちを抱いていただいたり、それがどなたかの幸せにひとつでも繋がるなら、すごく嬉しく思います。

――7月からは音楽劇「GREAT PRETENDER グレートプリテンダー」にて、物語のキーマン・フランス人の詐欺師(コンフィデンスマン)ローラン・ティエリー役が決まっています。久しぶりの男性役ですね。

 宝塚時代と同じことは絶対にできないし、する必要もないと思うんです。なので、きっと初めて男の人を演じる気持ちになるんだろうなって今から思います。

 しかもそれを“男役”ではない、男性と一緒に演じるわけですから、お芝居をした時に、どういう感覚になるのかな?というワクワクもあります。

 男役時代からずっと思っていましたが、人間だから、性別の違いはあっても心は同じなので、あまり「男らしくしなくちゃ」とは思わず、「その人物を生きる」で、いいんだろうなと。

 そういった意味では、宝塚の男役の延長ではなく、全く違う男性を演じている人間だと思って見ていただけたらいいなと思います。自分自身もそういう気持ちで臨むつもりです。

自分の中であった変化を、新しい表現に繋げていきたい

 私自身、最近いろいろな舞台を観に行って思うのが、やはり生の舞台を見る楽しさって、外見や表現よりも、目に見えない役者の人生観みたいなものを垣間見ることになるのではないか、ということ。そこに感動したり、共感したり、嬉しくなったり……。

 役者一人ひとりが背負っている、目に見えてないエネルギーを観に行くような感覚があると思うので、私も舞台に立たせていただく以上、いつも自分に正直でありたいし、いろんなことに豊かな気持ちでいたいです。

 そうすることで、きっとその舞台も充実すると思うので。充電はたっぷりできたので、ここからはそれを出す時が来たのかな、という感じがします。

――昨年から続くコロナ禍での公演中止など、エンタメ界は依然として苦しい状況が続いていますね。ファンの方も舞台を心待ちにしていらっしゃると思います。

 私自身、舞台に立たせていただいている立場でもありながら、舞台の一ファンでもあるので、昨年は公演中止なども経験し、もちろん辛く苦しい思いをしました。

 でも同時に舞台が好きだという気持ちを再認識する時間にもなりました。私も改めて舞台に立った時、「やっぱり生の、ライブって素晴らしい!」とすごく感じましたし、観てくださる側もそう感じてくれたのではないかと思います。

 我慢した分、やっぱり「好きだ」というその気持ちをもう一度、演じる側も観る側もお互いが見つめ直して、そうしてまた再会できた時には、とても素敵な化学反応が起こるのだろうなと思います。

――7月の舞台はもちろん、YouTubeをはじめ、SNSの配信など様々な形で、色々な活動をファンの方にお届けされていますよね。

 そうですね。これからも舞台だけじゃなく、いろいろな形でみなさんに向けて表現していけたらいいなと思います。

美弥るりか

アーティスト、俳優。2003年に宝塚歌劇団に入団(89期)。幅広い役柄を好演し、人気と実力を兼ね備えた男役スターとして活躍後、2019年6月に退団。ジェンダーフリーな表現者、アーティストとして活動中。7月からは音楽劇「GREAT PRETENDER グレートプリテンダー」にて、物語のキーマン・フランス人の詐欺師(コンフィデンスマン)ローラン・ティエリー役を演じる。

音楽劇『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』

世界を舞台にスリリングな騙し騙されの“コンゲーム”が繰り広げられる物語と、随所に散りばめられた軽妙なユーモア、細やかでバラエティ豊かなキャラクター造形で幅広い層から熱い支持を受けるアニメ作品が初の舞台化。主人公、通称・エダマメこと枝村真人を宮田俊哉が、物語のキーマン・フランス人の詐欺師(コンフィデンスマン)ローラン・ティエリー役を美弥るりかが演じる。
監修:古沢良太
脚本:斎藤栄作
演出:河原雅彦
出演:宮田俊哉、美弥るりか、加藤諒、山本千尋、仙名彩世、福本伸一、平田敦子、三上市朗、大谷亮介ほか
https://www.greatpretender-stage.jp/

2021.06.17(木)
Text=Kyoko Murahana
Photographs=Takeshi Takagi(SIGNO)
Hair & make-up=Tomoko Okada(TRON)
Styling=Yumeno Ogawa