「手応えはまったくない。『もっと頑張んないと!』と自分を奮い立たせています」

――小山田との共通点でいうと、金子さんも北海道から俳優の仕事をするために上京しています。なぜオーディションを受けたんですか? もともと俳優になりたかったのですか?

 オーディションを受けたのは「東京に行ってみたい」「このまま田舎にずっといるのは嫌だ」という動機でした。なので、(俳優・モデル部門を)受賞したことで、「役者になる」という目標を見つけた感覚です。

 もともと役者になりたいと思っていたわけではなかったので、どういう仕事なのかよくわからないまま東京に出てきてしまって。「ちゃんと頑張らなければ」と本腰を入れられたのは、上京して3年後くらいでした。

――最初の3年間はどのような心境でしたか?

 北海道で仲の良かった友達と離れて孤独でしたし、仕事も少なかったので飢えていました。小山田と同じ感じです。

 「何をしに出てきたんだろう?」と思うたびに、「役者をやるんだ」と自分に言い聞かせていました。その目標がなかったら、多分北海道に帰っていたと思います。

――「頑張らなきゃ」と思うようになったきっかけは?

 この作品もそうですが、少しずつ仕事をいただけるようになって、人との出会いが増えていったからだと思います。

 昨年初めての舞台『ヘンリー八世』に出演して、「僕はこの仕事が好きなんだな」と思えたことも、大きかったです。

――孤独は解消できましたか?

 はい。同じ環境で戦っている役者の友達や、マネージャーさんなど、身近な人たちの支えがあったおかげで、今は順調です。仕事があると人に会えるので、途切れずに仕事が続いているのも大きいと思います。今年は特に、舞台が2本続いているので楽しいです。

――小山田は写真で賞を獲って仕事も増えたのに「手応えがない」と言い放ちます。金子さんも傍目からは非常に順調に見えますが……?

 そこも小山田と一緒で、手応えはまったくないです。この仕事をしていると、才能のある人や魅力的な人にたくさん出会うので、あまり才能のない自分はいつも悲しくなって、「もっと頑張んないと!」と自分を奮い立たせています。

――キャリアの道筋はどのように定めているのですか?

 マネージャーさんと常に話し合っています。最近は、自分のやりたいことだけをやってもあまり成長しないのではと思って、いただいた仕事は頑張りたいと思っています。

 僕、本当に苦手意識が強いんです。今思うと、嫌だったとしてもやったことはすべてその後に繋がっているので、やらなくてもいい仕事なんてない、なんでも一生懸命やったほうが自分のためになる、と思うようになりました。

2021.05.19(水)
文=須永貴子
撮影=榎本麻美
スタイリスト=千葉潤也
ヘアメイク=Taro Yoshida(W)