コロナ禍で生じたストレスが原因か、はたまた加齢によるものか。あなたの周りでも、「寝つきが悪くなった」、「夜中に目が覚める」、「熟睡感がなく、起きた瞬間から疲れている」といった、眠りに関する不調を最近よく耳にしませんか?

 そこで、『月曜断食』の著者で、中医学ダイエット専門鍼灸院「Harriet」代表の関口賢先生に、東洋医学の観点から眠りについて解説していただくとともに、眠りとダイエットの関係、そして、3大タイプ別の不眠解消法&ツボケアについて教えていただきます!

第1回「不眠には3タイプがある」
第3回「イライラ不眠解消法」
第2回「モヤモヤ不眠解消法」
第4回「ダルおも不眠解消法」


あなたの睡眠のつまずきはどこ? 3つのタイプから原因を探る

 「よい睡眠が、よい人生をつくる」。僕が患者さんに繰り返し伝えている言葉です。

 いつの時代も不眠で悩む人は多いものですが、以前は「熟睡できない」「寝ても疲れが取れない」という悩みをよく聞きました。ところが、このコロナ禍以降、「なかなか寝付けない」という声が増えてきたのを肌で感じています。

 やはり、この先どうなっていくのだろうという不安が、寝つきを悪くしているのだと思います。

 「よく眠れない」という悩みの解決にあたっては、まず、自分が眠りのどの段階でつまずいているかを知ることからスタートです。

 ここでは、自分の悩みに素早くアプローチできるよう、睡眠の入り口、途中、寝起きに問題を抱える3つの不眠タイプに分けて考えていきます。

【3つの不眠タイプ】

「イライラ不眠」…睡眠の途中、夜中や明け方に目が覚めてしまう。熟睡感がない。
「モヤモヤ不眠」…睡眠の入口である寝つきが悪い。寝ようと思ってから30分〜1時間経っても寝つけない。
「ダルおも不眠」…目覚めた直後から疲れを感じる。寝ても疲れが取れない。

 各タイプの詳しい解説とお勧めのツボは2〜4回目の記事で詳しくお伝えしますが、大前提として知っておいてほしいのは、不眠の要因は大きく2つに分けられるということ。

 「モヤモヤ不眠」と「イライラ不眠」は、環境や人間関係からくるストレスなど外的要因が大きく影響し、「ダルおも不眠」は主に食習慣による内的要因が原因です。

 同じ人でも、強いストレスのかかる出来事に遭遇すれば「モヤモヤ不眠」や「イライラ不眠」に陥り、食生活が乱れれば「ダルおも不眠」にもなります。

 この記事の担当者である編集者Hさんは、自分は「イライラ不眠」だと思い、僕のおすすめしたツボケアを試したところ、寝つきはよくなったけど起床時の疲れが取れない「ダルおも不眠」の症状も自覚して、どちらのケアも意識するようになったことで睡眠が改善されていきました。

 Hさんのように複数の悩みを抱えるケースも多いです。睡眠を妨げる原因は1つじゃない。

 まずはこのことを知り、今、自分が抱えている睡眠の問題点にどうアプローチをするかを常に意識しながら、睡眠の質を上げていきましょう。

眠りが日中のパフォーマンスを上げ、人生が豊かになる

 睡眠の質がいいと、何が変わるのか。大きなところでは、睡眠の質がいいと起きている時間のパフォーマンスが上がり、人生が充実します。メンタルも安定しますし、太りにくくなるなど、いいことがたくさん起きます。

 話題の海外ドラマを見たり、スマホが手放せなくて目的もなくSNSを見続けていたり。今はコンテンツが豊富で、睡眠よりも自分を楽しませることを優先させがちですが、人生を長い目で見たときに、睡眠ほど大切なものはありません。

 眠りの研究によれば、人は24時間のうち6〜8時間、1日の1/4〜1/3の時間を眠るのがベストだとされています。1年に換算すれば3〜4カ月、40年生きていたら10〜13年は眠りに費やしている計算です。

 人はなぜこんなにも眠るのかといえば、寝ている間に脳と体のメンテナンスを行っているからにほかなりません。

 睡眠時間の不足、睡眠の質の低下などによってメンテナンスがしっかり行われないと、日中にイライラしたり、太りやすくなったり、病院にいくほどではない不調が続いたりと、起きている時間のパフォーマンスがガクっと下がります。

 ダイエットにしてもそうです。日中、どれほど食事内容に気を配っていても、眠りの質が悪いせいでなかなか結果につながらない、というケースは案外多いもの。

 拙著『月曜断食』でも「人は寝ている間にやせる」とお伝えしていますが、普通に考えて、人間の体がいちばん軽いのは、起床後にトイレをすませたあとですよね。

 日中に体重が減ることは、ほぼありません。むしろ女性は、夕方にかけて体がむくんで体重が増える傾向にあります。

 このむくみや不要になった老廃物が、寝ている間のメンテナンスによって回収・排泄されれば、朝には体重が減ります。逆に、排泄されずに蓄積されていけば、当然ながら、体重は朝に微増していきます。

 さらにいうと、寝ている間にも体はエネルギーを使います。そのエネルギーを夜食べたものから使うか、体に溜め込んだ脂肪をエネルギーとして使うかで、体重や体脂肪の減り方が変わってきます。理想的なのは、いうまでもなく後者。

 脂肪を落としていくためには、夜の食事がほぼ消化された状態で眠るのが理想です。

2021.04.24(土)
文=今富夕起
写真=深野未季