阿吽の呼吸でインタビューを盛り上げてくださった4人

 名脇役が実名で出演。おじさん俳優がシェアハウスや無人島で暮らし、「本当かも?」と思わず想像してしまうような制作の裏側を描き、大好評を博したテレビ東京系列のドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズ。

 今年、第3弾が放送され、映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』が完成した。若手からベテランまで100人以上の個性派キャストが集結し、まるでお祭り騒ぎ。

 なんといっても一番の魅力は中心にいる〈元祖バイプレイヤーズ〉田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一の4氏だ。取材中も呼吸はばっちり。ドラマから映画までの道のりを楽しく話してくれました。

4人でポンと顔を合わせたときに、「いける!」と思った

――2017年にスタートした『バイプレイヤーズ』シリーズが映画に。どんなお気持ちでしたか?

田口 『バイプレイヤーズ』のリーダーは大杉漣さんなんです。シリーズ1、2では撮影が終わるといつも〈飲みミーティング〉をして、漠然と「このメンバーで映画を撮れたらいいよね」と話してました。ただ、途中でリーダーを失ってしまい、我々としては漣さん抜きの『バイプレイヤーズ』は考えられなかったので、なかなか腰が上がらなかったんです。

遠藤 俺が一番、無理だと思っていたと思う。漣さんなしでは参加したくないって。

田口 でも、映画化を一番望んでいたのは漣さんだったこともあり、プロデューサーや監督、スタッフら、このドラマに関わってくれた人たちが、2年くらいかかっていろいろなアイデアを出してくださった。試行錯誤の末、「ネクストバイプレイヤーズにバトンを渡す」という役割ならば、我々も参加できるんじゃないかという提案を受けて、シーズン3と映画をやらせていただくことになりました。

松重 もともとは19年前に〈シネマ・下北沢〉という小さな映画館で、「6人の男たちフィルムズ」という特集上映をしていただいたことがきっかけで『バイプレイヤーズ』は始まったんです。当時に比べれば、軸足は必ずしも映画にないかもしれないし、「映画化」が昔ほど事件ではなくなっているのかもしれません。それでも東宝さんのようなメジャー大手が手がけることになったというのは、僕らもにわかに信じられないところがありましたね。

光石 本当に。今日だって、こんな高級ホテルで取材を受けるなんて、狐につままれているような感じです。車を降りたときから、ずっと疑心暗鬼でした。大丈夫か? 騙されているんじゃないか? って(笑)。

3人 (笑)。

松重 映画は完成しましたけど、僕たちが作り上げたというよりは、ドラマの前段階から大杉さんが育ててくださった土壌を、いろんな人が支えて耕し、ここまで形にしてくださった。僕らはその一部に乗せてもらっているような感覚でいますね。

田口 (深く頷きながら)……いい話!

遠藤 撮影に入るまではどうだろうという気持ちでいたんだけど、4人でポンと顔を合わせたときに、「いける!」と俺は思ったんですよ。シリーズ1から積み重ねてきたことがちゃんと培われていた。映像を見て、改めて、こんなに肩の力の抜けた4人が好き放題している場面なんて、できそうでできるもんじゃない。感動しました。楽しかった!

田口 4人で会うとはしゃいでしまうというか(笑)、やっぱり楽しいんですよね。時間があいても積み上げてきたムードが、揃った瞬間に再生される感覚がある。

松重 『バイプレイヤーズ』という作品の特殊性は、全員が実名役ということ。個人の自分と、役をどんな塩梅で演るのか。これ芝居なの? 素なの? というギリギリのところを狙うのが究極の目的です。カメラが回り始めてからスイッチが入るのではなく、普段からあの関係性があって、僕らがいるところから何かが始まっている。人にお見せしていいところと、放送できない部分はちゃんと使い分けていますし(笑)。

田口 僕の下ネタとかね?

松重 トモロヲさんは必ずカット尻に下ネタをいれるという……(笑)。

光石 若いころだったら、難しいところもあったかもしれませんが、50歳を過ぎてやり始めたのがすごく良かったんじゃないかと思います。お互い邪魔をせず、節度を持って品良くお芝居できているんじゃないかと……。

松重 品いいですか? トモロヲさんの下ネタも?(笑)

光石 そういう部分も品いいじゃないですか(笑)。

田口 品位ある下ネタ。

松重 使えないけど。

田口 礼節ある下ネタ。使えないけど(笑)。

2021.04.10(土)
文=黒瀬朋子
撮影=佐藤 亘