東村アキコ「いつも同じタイプの顔を好きになる」 洗濯物を畳みながら思い出した相手が初恋の「こうちゃん」だった から続く

 自分自身の初恋に着想を得て描いた『私のことを憶えていますか』で、漫画業界初となる日韓同時刻更新の週刊連載に挑む東村アキコさん。初恋に国境はあるのか、また、韓国発のオールカラー縦読みのデジタルコミックWEBTOON形式のよさについてもお聞きしました。(全2回中の2回目。前編を読む)

東村アキコさん
東村アキコさん

昔の少女漫画みたいなラブストーリーを私くらいは伝え続けよう

――『私のことを憶えていますか』(以下、『わたおぼ』)には、「初恋」「幼なじみ」「芸能人との恋愛」と胸キュン要素が盛りだくさんです。あえて意識して盛り込んだのですか。

東村アキコ(以下、東村) 私は「恋愛をしない」という選択肢がない時代に生きてきたんです。といっても、漫画の話ですけど(笑)。

 昔の少女漫画って、大げさにいうと「恋愛が人生のすべて」な作品ばかりで、ちょっとダメなところのある女の子が、王子様みたいな男の子と恋に落ちる、というラブストーリーが圧倒的に多かったんですよ。でも今、そういう漫画って本当に少なくなっちゃって。

 だから私くらいは、大恋愛した二人が手をつないでお花畑を走る、みたいなことを伝え続けようと思って。そんな恋愛が人生で1回くらいあってもいいよね、っていうのを描いていこうと。

 
 

ベタベタの昭和的恋愛漫画があってもいい

――確かに、昔の少女漫画の世界を彷彿とさせる部分もありますね。

東村 今って、「お一人さま」とか、「どう生きていくか」を描く社会的な漫画も増えてきて、ジャンルも多様化しています。私もそういう漫画は好きでよく読んでいますが、でもその中にひとつくらい、ベタベタの昭和的恋愛漫画があってもいいと思うんです。

 今時そんな恋愛誰もしていないし、押しつけるつもりはもちろんないんですけど、でもそんな「ベタベタの恋愛」をしたっていいと思っている人もいるはずなんです。初恋の甘酸っぱさやキュンと胸が苦しくなる感覚ってきっと誰もがそれぞれの形で経験していて、初恋を懐かしく思わない人って少ないんじゃないかな、と思うから、そこからつなげられたら。

2021.03.09(火)
取材、構成=相澤洋美
写真=松本輝一/文藝春秋
ヘアメイク=後藤るみ
スタイリスト=藤原わこ