#214 Yokkaichi
四日市(三重県)

 日中のコンビナートは無味乾燥とした眺めですが、夜の訪れとともに、光輝き、存在感を発揮します。

 複雑に入り組んだパイプ群、あちこちに灯る白い光、煙突から立ち上る水蒸気、コンビナートがまるでひとつの巨大な発光体のよう。それは近未来都市のようでもあり、宝石箱のようでもあり、見るものを魅了します。

 いわゆる、“工場萌え”です。

 工場夜景の名所は日本各地にありますが、なかでも聖地とされているのが、四日市です。

 本来は工場内作業者の安全確保の保安灯ながら、そのきらびやかさに、2008年あたりからイルミネーションのような扱いになり、見学ツアーや写真コンテストも開催されるようになりました。

 ビーチに夜景は関係ない、と思うかもしれませんが、“ビーチ”を“水辺”と考えれば、これもアリ。

 四日市は、塩浜・石原地区(第1コンビナート)、午起地区(第2コンビナート)、霞ケ浦地区(第3コンビナート)の3つの工業地帯が、伊勢湾に流れ込む河川や河口、運河に面したウォーターフロントにあります。

 つまり、水面に反射して、夜景が2倍楽しめます。

 しかも、周囲に巨大な構造物が少ないため、広範囲に見渡せ、プラントが集積しているので、光が強く感じられるのもポイントです。

 さらに観賞スポットが高層タワー、歩道橋、堤防、橋脚の下などバラエティに富み、あらゆる角度やシチュエーションが狙えるのです。そのため、夜景ファンの間で四日市は“3D夜景”と呼ばれているとか。

 そもそも四日市が工場地帯となったきっかけは昭和30年代のこと。旧海軍燃料基地跡に日本初の大規模な石油化学コンビナートが造成されました。

 急速に成長する日本経済を支える中で、大気汚染や水質汚染などの公害問題が発生したこともありましたが、市民、事業者、行政の努力によって改善され、元の環境を取り戻すことができたのです。

 四日市での夜景観賞の一助となるのが、「四日市コンビナート夜景マップ」(観光協会のホームページからダウンロードできます)。

 11カ所の夜景スポットが紹介され、QRコードをスマホで読み込めば、地図アプリにアクセス方法が表示されます。

2021.01.30(土)
文・撮影=古関千恵子