ラッパーとしては珍しい、透明感のある歌声と等身大のリリックでティーンを中心に注目を浴びる、さなり。TBS系金曜ドラマ「恋する母たち」の劇中歌「まんじゅうこわい」も手掛けた18歳の素顔に迫る。

●SKY-HIに憧れ、日本語ラップにハマる

――幼い頃の夢は?

 小学2年生のとき、心理学に興味があって、ネットでいろいろ調べたり、人間観察をしたりしていました。そのノリもあって、ちょっとだけ将来は心理学者になりたいと思っていました。

――その後、小学3年生のときに、YouTubeに1日1本オリジナル動画の投稿をされます。そのきっかけは?

 その頃の自分はTVを見るような感覚で、HIKAKINさんやPDS株式会社さんなどのYouTubeを見ていたんです。自分でもやれることを知って、見様見真似でYouTuberを始めたんですが、その頃はゲーム実況や寸劇など、音楽とはまったく関係ない動画ばかりでした。

――ちなみに、ラップの原点とは?

 その頃に、YouTube でSKY-HIさんのMVを見たことがきっかけです。それで日本語ラップにハマり始め、中学生になると、友だち5、6人とフリースタイル・ラップを始めました。一方で、5年生のときにはYouTuberをやめているんです。急に恥ずかしくなって、そのときの動画を全部消しました(笑)。

●中学生ながら、ラップコンテストでグランプリ受賞

――そして、中学3年生のときに「ちょこ」として、オリジナル音源を制作。YouTubeやインディーズ音楽配信サイトなどに投稿されます。

 とにかく、自分で作品を作ることが好きなんです。中学2年のときに徳島から兵庫に引っ越したことで、友だちがいなくなってしまったんです。それで、他人に聴いてもらえなくてもいいけれど、とりあえず曲を作りたくて、どこかのサイトにアップしていました。再生数とかも気にせずに。もし、友だちに聴いてもらうことがあったとしても、URLのリンクを送るだけですし。

――制作される楽曲の幅が一気に広がったと思いますが、いかがでしょうか?

 ちょうど音楽理論に興味を持ち始めたこともあって、視野も幅も広がったと思います。いろんなボカロPが作った楽曲を参考にして、ラップではなく、純粋に歌うことやメロディラインにこだわるようになりました。

――18年、音楽レーベル&マネジメント会社「A-Sketch」主催の「OverFlow Project」に応募。15歳の中学生ながら、グランプリを受賞されます。

 曲のストックはないながらも、どこか根拠のない自信がありました。「デビューするなら、早ければ早いほどいい」と思って応募しました。「二十歳でデビュー」とか、どこかイヤだったんです。スキルだけでなく、年齢や将来性を買われてのグランプリ受賞だとは思いますが、やはり嬉しかったです。

2021.01.15(金)
文=くれい響
写真=末永裕樹