お芝居の中でカメラを忘れる瞬間がある

――あともう少しだけ。2020年の9月に出た銀杏BOYZの単行本の、菅田将暉さんとの対談の中で、峯田さん、監督に指示されてないのに身体が勝手に動いちゃう時がある、という話をされていましたが──。

 言ってる? そんなこと。

――はい。それはどんな感覚なんでしょう?

 ……どんなだろうな……なんだろなあ……今、カメラ回ってないじゃん。回ってて、しかもそれがなんかの機会に発表されちゃうとしたら、絶対カメラを意識するからさ。

 今、カメラが回ってないから、こうやってしゃべってるけど、誰かに見られてるって意識だったら、変わると思うんだよね、人って。

――まあ、それはそうですね。

 でも、なんか、お芝居で俺が「あ、いけるな」って思う時って、カメラもいて、音声さんも照明さんもいっぱいいる中でさ、でもカメラを忘れちゃって、向かい合ってる役者と、今しゃべってるような感じで……「なんだ? この自然な感じは」っていうのが、たまーにあるんですよ。

 俺、今、こういう手の形してるじゃん(片手で腿の外側を触っている)。これ、自然に出てるものじゃん。演技の時も、たまにこうやってる時がある。

 これってさ、狙って自分がやったことじゃなくて、今この空間の中で、導き出された動作でしょ。それは嘘じゃないじゃん。

 監督ってさ、嘘じゃないものが、撮りたいわけ。カメラマンも。この人、今、嘘がない動作をしてる、嘘がない顔をしてる、嘘がないことを言ってる、っていうことを、たぶん見つけたいわけでしょ?

――なるほど、セリフも役も嘘なんだけど──。

 そういう時、あるんですよ。どういう条件なのか、わかんないけど、そういうのがたまに生まれんの。でも「それ、もう1回やって」って言われても、もう嘘になっちゃうし。

 たぶんね、それをいかに出せるかだと思うんですよ。出そうと思ったら、狙いが入るから、難しいけどさ。

 でも、向かい合ってる人が、よっぽど自分とシンクロしたからなのか、なんかわかんないけど、たまーにね、カメラが回ってるのも忘れて、「うわ、なんでこんなに素でしゃべってんだろう?」みたいなの、あるんですよ。

 セリフ決まってんのに、自分の言葉で言ってるみたいな感覚っていうかね。

2021.01.16(土)
文=兵庫慎司
撮影=佐藤 亘