『棚からつぶ貝』(文藝春秋)は、世界を飛び回るイモトアヤコのエッセイ集!

 旅で出会った人、芸能界の友人、大好きな家族……世界中を飛び回りながら、著者が出会った大切な人たちを綴った、初のエッセイ集です。

 その中から、大切なあの人について綴った一節を特別転載します。

》「私にはロックスターだったうちの妹」を読む


一生ついていこうと心に誓った人

 仕事を始めて早 10 年。それほど数は多くないものの、いわゆる芸能人と呼ばれる方と交流する機会が増えた。しかし最初の頃は、親しい芸能人の方は皆無であった。

 そりゃそうだ、今よりも海外で過ごす時間が長く、ほぼ3分の2は異国、しかも僻地の私にとって、日本の芸能界の方など遠すぎる存在だ。正直まだアマゾンのターザンの方が近い存在であった。

 そんな特殊すぎる私の芸能生活において、初めてプライベートで親交を持ったのが いとうあさこさんである。前々からなんとなく名前の雰囲気、顔の雰囲気に親近感を抱き、将来の自分の姿を重ねていた。そう思うのは私だけではないらしく、あさこさんも、私が 24 時間マラソンを走った後、知らないおば様によく「マラソンお疲れ様でした」と声をかけられたと言っていた。

 そんなあさこさんと、初めて一緒にロケをしてすぐさま意気投合。連絡先を交換し、ご飯に行きましたとさ。

 めでたしめでたし、とはならなかった。

 連絡先を交換したのまでは良かったが、なんせ初めての芸能人の先輩。自分からどうお誘いしてよいか分からず、 23 歳のイモトはモジモジしていた。

 そうこうしているうちになんと、とあるドッキリ番組で私があさこさんに仕掛けることになった。私がお酒好きのあさこさんを誘いサシで飲み、あさこさんからおもしろ名言を聞き出すというもの。要は騙すのだ。連絡先は知っているが、まだ一度もプライベートでは飲んだことのない先輩を騙すのだ。すごく良心がとがめた。なんでもっと早く誘っておかなかったんだろうと後悔の念に駆られた。

 一発目がドッキリだなんて……。しかし仕事は仕事。仕掛け人としてはきっちり役目を果たさねばとあさこさんに連絡した。

 「あさこさん ?  もし良ければ今度一緒に飲みませんか?」

 「いいね、もちろんだよ」

 「お店はこちらで手配します ? 」

 焦りからなのか「!」を多用したのを覚えている。

 無事に日程やお店も決まり(番組のスタッフさんが全てやってくれました)いざ当日。

2020.12.12(土)
文=イモトアヤコ