#210 Ikema Jima
池間島(沖縄県)

 「んみゃーち」。

 これは“みゃーくふつ”と呼ばれる宮古島の方言で、「ようこそ」という挨拶。

 沖縄本島ならば「めんそーれ」、八重山諸島では「おーりとーり」。同じ県の中でも、同じ気持ちを表す言葉が、まったく異なります。

 宮古語も、沖縄語も、八重山語も、UNESCOが発表した日本の8つの「消滅の危機にある言語・方言」。大切に守り継ぎたい言葉たちです。

 宮古語は少し離れただけで、さらに村ごとに言葉が異なります。特に池間島を中心とした人々は、自分たちの言葉を大切にしています。

 しかも独自の文化や習慣、信仰をかたくなに守る彼らは“海洋池間民族”と呼ばれ、誇り高き人々とみなされています。

 海洋池間民族には美男美女が多く、この島をルーツとするトップモデルや女優さんもいます。

 沖縄県宮古教育部会『宮古島郷土誌』(1937年)では、海洋池間民族に関して「南洋系統に属し、漂流して池間島に部落を造ったのではないかと思はれる」と紹介されています。

 どうやら他のエリアの人々よりもホリが深い、外国人のような顔立ちをしているもよう。

 先日、宮古島のタクシーに乗った時も運転手さんいわく、「池間の人は顔つきが違うからね、ひと目でわかる」と、出身の有名人を教えてくれました。

 海洋池間民族は池間島を主に、伊良部島の佐良浜、宮古島の西原に分かれて暮らしています。

 これは、1720年に首里王府宮古頭によって、池間島から伊良部島の佐良浜へ14戸が強制的に移住させられたのをはじめに、数回にわたり、政府によって移動を強いられたため。

 分村しても守っている彼らの文化のひとつが、旧暦の8月もしくは9月の甲午(きのえうま)に3日間にわたり池間島、佐良浜、西浜で催される、“ミャークヅツ”というお祭りです。

 元(ムトゥ)と呼ばれる御嶽(うたき)に、豊作や豊漁、村や家族の繁栄の祈りを捧げ、“クイチャー”という舞踊を村総出で奉納します。

 男性たちの「ヒャササッサー」という喜びに溢れた掛け声、女性のたおやかな神歌、これらがひとつになって盛り上がります。

 誇り高き海洋池間民族、お会いしてみたい。池間島に行ってみることにしました。

2020.12.05(土)
文・撮影=古関千恵子