写真家・桑島智輝が妻の安達祐実を日々撮り続けているシリーズの新刊がリリースされた。

 『我旅我行』と題された写真集には、いったい何が写っているのか。

写真が取り持つふたりの関係

「初めて撮ったときからかなり特殊というか、この人は特別な存在なんだなということには、すぐ気づきました」

 青年漫画誌や週刊誌などでグラビア写真を多く手がけていた桑島智輝さんのもとに、安達祐実さんを撮るプロジェクトが持ち込まれたのは、2011年のこと。

 撮影に入ってカメラを向けてみると、明らかに他の被写体とは感触が違った。

「安達さんは徹底して『何もしない人』でした。ふつうの俳優、アイドル、芸能人の方だったら、撮り始めると何かしらパフォーマンスをするもの。彼ら彼女たちのパブリックイメージに合った雰囲気を、みずから醸し出してくれるわけです。

 安達さんはそうしない。ただそこに在る、といった感じで佇んでいる。

 でも、こちらからちょっと石を投じてみると、際限なく水紋が広がっていくみたいに、パアッと動きが出る。

 カメラを構えてぐっと距離を詰めてみたり、『こんなこと考えてみて』などとちょっとしたお題を出せば、彼女は即座にオリジナルな新しい世界を創り始める。

 ああこの人は根っからの俳優なんだな。そう感じたのを覚えています」

 撮られることへの「肚の据わり方」も、尋常じゃなかった。

「どんなタイミングで撮ろうとしても、嫌がるそぶりなんて一切ありません。いつシャッターを押したってしっかり『絵になる』ことにも、ちょっと驚かされた」

 2歳で子役デビューし、小学生のころにはすでにCMにドラマにと大活躍していたのが安達さんである。常に「見られる存在」であることが、心身に染み付いているのだろう。

 彼女の生活を追いかけ撮影することに、桑島さんはのめり込んだ。

2020.11.24(火)
文=桑島智輝、山内宏泰