4年の歳月をかけて小説家デビューを果たした

 お笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介さんによる初の恋愛小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』が2020年11月11日(水)に発売された。

 約8000本という圧倒的なネタ数の多さで知られ、先に開催されたコントNo.1を決定する賞レース「キングオブコント2020」で初優勝を果たした実力派コント師・ジャルジャル。

 過去にも絵本『なかよしっぱな』で物語を構成したことのある福徳さんが、初の長編小説の題材として選んだのは、ピュアなラブストーリー。

 小学生の頃、父親からのある質問をきっかけに、恋愛小説ばかりを読むようになったという福徳さんに、4年の年月をかけた執筆への思い、人を好きになることの魅力などについて伺った。

 自らをさらけ出すのが苦手ながら、「今作ではすべてをさらけ出せた」。「人間味がない」と評される自身への葛藤、好意が及ぼす他者への優しさなど、はにかみながら静かに語ってくれた。


父から言われた言葉で、恋愛に興味を持った

――恋愛小説を読み始めたのは、お父様の言葉がきっかけだったそうですね。

 小学生の頃に「好きな子おるんか?」と聞かれたんです。返事を濁していたら、「濁すってことはおるってことやな。ほんまにその子のこと好きなんか? 本気なんか? ちゃんと好きでいとけよ」って言われて。

 そのときは適当に答えたんですけど、ほんまに一生好きなんかな? ってふと思ったんです。

 結局、中学生になったときにはその子のことは好きじゃなくなって、やっぱり一生好きちゃうかったなと反省しました。

 そのあとに出会った映画『耳をすませば』で主人公の月島雫に天沢聖司がプロポーズするシーンで、“彼は一生、好きな相手に中学生で出会ったんや”と思ったときに、また父親から言われた言葉が僕の中に響いてきて。

 そこから恋愛に興味を示すようになって、恋愛小説ばかり読むようになったんです。

――恋愛小説を読むようになって、恋愛そのものへの解釈はどうなっていくんですか?

 街を歩いていてもたくさんのカップルとすれ違いますけど、そのすべてに物語があって、みんなそれぞれに悩んでいて、焼きもちをやいている。

 それが素敵で単純に面白いなと思うようになりました。

2020.11.15(日)
文=高本亜紀
撮影=平松一聖