前代未聞の大ヒットを飛ばす『鬼滅の刃』

 日本映画の歴史が、変わりつつある。吾峠呼世晴氏の人気漫画『鬼滅の刃』の劇場アニメーション映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が、劇場公開からわずか10日間で興行収入107億円を突破する前代未聞の大ヒットを記録。

 数字はなおも伸びており、ネット上では国内興行収入歴代1位の『千と千尋の神隠し』(2001)の興収308億円を超えるのでは? と期待の声も上がっている(2020年10月28日[水]現在は、歴代32位)。

 ちなみに歴代3位は『アナと雪の女王』(2014)の255億円、歴代4位は『君の名は。』(2016)の250億円だ。このペースでいけば、十分射程圏内といえるだろう。

 コロナ禍という未曽有の状況にあっても、圧倒的な強さを見せる『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。もちろん、コロナ禍だからこそ1館で1日40回超上映というような状況も生まれたといえるし、競合作品が少ないという見方もできる。

 ヒットの理由は様々な見方ができるだろうが、ひとつ重要なのは、そもそも『鬼滅の刃』というコンテンツ自体、一朝一夕で人気を獲得してきたのではないということだ。

 原作者の吾峠氏には長い下積み時代があり、本作の前身となる短編漫画『過狩り狩り』が発表されたのは、2013年。

 その後、プロトタイプとなる『鬼殺の流』を経て、2016年2月から「週刊少年ジャンプ」にて連載が始まった。

 TVアニメの制作が発表されたのは、2018年6月のこと。2019年3月には特別上映版が劇場上映され、TVアニメ放送が始まったのは2019年4月。

 『鬼滅の刃』は、約7年の月日をかけて、堅実に人々の心をつかんできたのだ。

 つまり、もともと漫画ファンを中心に人気があって、アニメによって新規ファンを獲得し、話題が話題を呼んで大輪の花を咲かせたということ。主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が研鑽を積んで少しずつ強くなっていったように、本作もファンの熱意に支えられ、一歩一歩進んできた。

 そのことを念頭に置きつつ、今回は『鬼滅の刃』の大きな魅力である「キャラクター」を中心に、ご紹介していきたい。なお、以降の文章に関しては『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』までの内容に止めておくため、どうぞご安心を!

2020.11.01(日)
文=SYO