劇団「□字ック」主宰の山田佳奈が、2013年初演の同名舞台を自らのメガホンで映画化した『タイトル、拒絶』。その主演を務める伊藤沙莉が、自身の状況の変化やキャリアについて語る。

» 伊藤沙莉 第2回インタビュー   

●世間からの認知の変化

――2017年にNHK朝ドラ「ひよっこ」が放送され、主演映画『獣道』が公開。このあたりから、伊藤さんの周囲の状況が変わったと思いますが、声をかけられることも多くなりましたか?

 それまでは学園ドラマに多く出ていたこともあり、「ひよっこ」で人生の先輩方から声をかけていただけることは有り難かったです。ただ、そのときは伊藤沙莉というよりは、“米子”役を演じていた子という認知のされ方でした。「伊藤さんのドラマ観ました!」と直接言われるような世間の反応でいうと、「獣になれない私たち」(18年)や「これは経費で落ちません!」(19年)だと思います。

――今年に入っても、「いいね!光源氏くん」や、主人公の声優を務めた「映像研には手を出すな!」と、その勢いは止まるところを知りません。

 「いいね!光源氏くん」では「けもなれ」「経費」にいそうなOLキャラでしたが、「映像研」のお仕事をやらせていただいたことで、今までとは違った方が声をかけてくださることが多くなった気がします。現場のスタッフさんやキャストの方から「見たよ!」と言われるのは、断然「映像研」と「全裸監督」(19年)が多いですね(笑)。

●環境が変わったという感覚はない

――ぶっちゃけ、ブレイクしたという実感や周囲の変化は?

 どうなんでしょう? この数年で、立て続けにお仕事をいただいていることは、とても有り難く、幸せですし、いただけるお仕事や周りの対応で、なんとなく自分の中で「ステップがひとつ上がったかも?」と思うことはあります。でも、基本的には、何か環境が変わったという感覚がないんです。お芝居をすることで、新しい作品がひとつできて、宣伝などをやって、次の作品に行く。そういう自分がやってることの流れは、昔から変わっていませんから。

――ちなみに、15年放送のドラマ「トランジットガールズ」で主演を務めた後に、また小さい役を演じるような状況に焦りはありましたか?

 もともと、私は真ん中の人ではないので、「トランジットガールズ」の後に1シーンしか出番がない役が来ても、それが自分のホームというか、自分がそれまでやってきたことなので、安心しますし、だからこそ、自分を見失うことがないと思っていたぐらいです。なので、「これでブレイクしなきゃ!」という焦りのようなものはなく、意識的にはフラットでしたね。

2020.10.30(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=AIKO
スタイリスト=吉田あかね