食は人の営みを支えるものであり、文化であり、そして何よりも歓びに満ちたものです。そこで食の達人に、「お取り寄せ」をテーマに、その愉しみや商品との出会いについて、綴っていただきました。第4回はアートディレクターの秋山具義さんです。

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 幻のバターと呼ばれている「なかほら牧場 ピュアグラスフェッドバター」は、パッケージデザインが可愛くて、とてもセンスが良いけど、本当に美味しいの? と思っていました。ぼくは自分がデザイナーをやっているくせに、食品のパッケージデザインに対しては、良さげに見せてごまかそうとしても騙されないぞ! という風に、変に身構えてしまうのです。それと、2年前にバターコーヒーダイエットというのが流行った時に、ネットでグラスフェッドバターを買ったのですが、なんか後味が悪くて、グラスフェッドバターそのものに良い印象がなかったということもあります。

 届いてすぐに、トーストにたっぷり塗って食べました。食塩不使用だけど、どうなんだろうと一口食べたら、なんとも芳醇な香りで美味しい~。食パン自体も、近所の美味しいパン屋さんのものではあるものの、そのパンの実力以上に美味しく感じました。このバターがパンの旨味を引き出しているんでしょうね。かなり前ですが、京都の老舗旅館に泊まったときに、朝食は和食と洋食が選べたので、洋食にしたときに出てきたトーストが、ものすごく美味しかったのですが、その香りと味が蘇りました。

 家にお客さんが来たときに、バターのことは何も言わずに焼き立てのパンに塗って出したらビックリするんじゃないかなぁ。

 パンだけでなく、ご飯にも合いますね。とうもろこしご飯にこのバターをのっけてご飯の温かさで溶けたところを口の中に入れたときの至福感ったらすごかったです。

2020.10.23(金)
文=秋山具義