台湾でカラフルなサージカルマスクが大ブームになっている。

 現地在住日本人ライターが、ブームを牽引するメーカー「CSD中衛」を直撃取材。生産のいきさつ、人気の秘密、そして今後の展望とは? 2回にわけてお届けします。

» 「カラーサージカルマスクに台湾が熱狂 火付け役メーカーに聞く誕生秘話①」


「CSD中衛」のカラーマスクが 超絶ヒット

 コロナウイルス第二波の到来に備えるべく、マスク着用が義務づけられる場所が増え、街ゆく人々のマスク姿が再び見られるようになった台湾。しかし、その景色は以前と少し違って見える。

 俄然、カラフルなのだ。しかも人々が着けているのは布マスクではない。不織布製のサージカルである。

 台湾のマスクは、もともと水色または薄緑色が主流で、白色が大半を占める日本とは趣きが違うのだが、ここへきてマスクのポップ化が進んでいる。

 それを象徴するシーンがある。

 2020年8月10日(月)から、医療・衛生分野での交流強化のため、アメリカのアレックス・アザー保健福祉長官らが訪台。

 滞在中に行われた専門家会議の席で、賴清德副総統、陳建仁前副総統、陳時中衛生部長(厚労大臣に相当)ら台湾勢は揃ってビビッドカラーのマスクを着用。全員が水色のアメリカ側とのユニークなコントラストを演出して見せた。

 これはもう、サージカルマスクの先進性についての勝利宣言といっても過言ではないだろう。

 こうしたビビッドカラーの流行を牽引するのは、医療用消耗品の老舗メーカー「CSD中衛」。SNSで検索すると「永遠に手に入らない」「買える気がしない」「もはやプラチナチケット並み」など、ため息混じりのコメントが並ぶ。

 入手が困難な理由は、政府によるマスクの徴収令によって、自由に販売できる量に限りがあるためだ。

 不定期な発売情報をキャッチし、ネットに張り付き、徹夜をし……争奪戦に勝ち抜いた者だけが手にすることのできる激レアアイテムである。独特の色合いと向かって右上に光る「csd」のロゴは、まさに勝者の印だ。

 かくもレアなアイテムであるのに、街ゆく人のマスクが、日ごとカラフルになっていくのは、なぜか。

 それは、人々がカラーマスクを渇望している今こそ商機と、他メーカーがこぞって追随したため。実に台湾らしい現象といえる。以前からあるパステル調のカラーバリエが増えたほか、ビビッドカラーも急増中だ。

 最新トレンド、季節感、年相応、クラス感、ブランド信仰……。台湾のファッションは、こうした縛りから潔いまでに解き放たれていて、とにかく自由だ。そんな土地柄で、身に着けるものに関して、これほどのブームが起きたことは、とても興味深い。厳密に言うと、マスクは衛生用品であってファッションアイテムではないけれど。

 後扁でも引き続き、大手マスクメーカー「CSD中衛」の營運長(最高執行責任者)で、カラーマスクの生みの親である張德成(ジョナサン・チャン)氏にカラーマスクの未来について伺っていく。

2020.09.16(水)
文・撮影=堀 由美子
写真提供=CSD中衛