「目の前に観客はいない」配信ライブで現場の苦労

 政府は2020年7月22日、コロナウィルス対策として行っている大規模イベントの人数制限について、8月1日に予定していた制限緩和を、8月末まで延期と発表。現在は「人数上限5,000人、または収容率の5割」と定められ、8月1日からは人数制限をなくす方針だったが、東京の感染拡大などを受け調整された。

 7月10日以降プロスポーツの一部は有観客での実施に踏み切ったものの、イベントにおいては、新宿の劇場でクラスターが発生、高田馬場のライブハウスでもビジュアル系バンドのメンバーの全員の感染が発覚。有名俳優や劇団員に感染者が見つかり一部の公演を休止と、動き出したエンタテインメントに影を落としている。 

 そんな中、無観客の会場から有料でコンサートを配信するオンラインライブが活気を見せている。配信プラットフォームのサイトには、音楽ライブはもとより、演劇、お笑い、歌舞伎、ファンイベントなど、大小様々なイベントの配信チケットが販売されている。

 配信ライブは、自身のスマートフォンやパソコンで見られる気軽さに加えて、通常のチケットより4~6割ほど安いことも魅力だ。地方に住んでいたり、身体的な理由があってライブに行きづらかった人や、チケット獲得が難しいライブを見られるというメリットもある。 

 演劇やクラシック公演等に比べて飛沫が飛びやすく、感染の懸念がある音楽ライブに的を絞り、主要有料配信ライブを通してその中身や可能性について探った。

先陣を切ったジャニーズ、臨場感のサザン

 通常は約1万5千人の観客を収容できる横浜アリーナを使い、大規模ライブの有料配信を行ったのはジャニーズだった。6月16日~21日までの6日間に渡って、V6や嵐をはじめ毎日複数グループが登場し、合計20組が有料配信ライブを実施。

 広いステージで久々に歌い踊る各グループのメンバーたちが、画面越しはもとより、客席へ手を振り、スタンド席の遠くまで視線を向ける。客席にせり出した花道やフロートで会場内を大きく移動、炎や銀テープなどの特殊効果もふんだんに使われ、照明に照らされた客席全体を俯瞰でとらえる映像は、アリーナ会場ならではの迫力を感じさせた。

 ダンスアーティストの場合、フォーメーション上“密”な状態となり、ライブの再開が難しかったことから、6月半ばのステージ再始動は、本格的にライブ・エンタテインメントが動き出す旗手役となった。

 同じく横浜アリーナよりライブ配信を行ったのは、6月25日に42周年を迎えたサザンオールスターズ。8つの配信プラットフォームが用意され、18万人がチケットを購入し50万人が視聴した。

 メンバー間にはクリアパネルが立てられ、ダンサーを従えた曲も十分に距離を保つ配慮も。無観客という点を活かし、客席に仕込んだ大型照明は大胆なライティングを放ち、全客席の椅子に設置された小さなライトは光の海をつくる。

 ボーカルの桑田佳祐が画面越しに声を掛けるのはもちろんのこと、客席に向かって手拍子やコール&レスポンスを煽る。

 またステージ袖にいる現場スタッフも一緒に盛り上がる姿を映しこみ、拍手や笑い声のSEを足すことで、画面越しとの“一体感”を生む工夫が随所に凝らされていた。

2020.08.10(月)
文=筧 真帆