料理を「作らない・作れない」ことに罪悪感を持っている人に贈る、フードライター・白央篤司さんの金言&レシピ。

 冷凍食品にちょい足しするのも立派な自炊。簡単なことから始めてみませんか?


 新型コロナの影響で、うちのツレもリモートワークになりました。いやー………振り返ってみてやっぱり、しんどかったですね。ひとりの時間がなくなって、3食作るのがエンドレスになるって。

 朝送り出して、帰ってくるまでのひとりの時間が消滅。昼食も作る日が続き、終わりは見えない。

 「自分の昼ごはんも作るんでしょう? ひとり分もふたり分も一緒じゃない」といわれることもあるけど、「自分だけなら別に食べなくてもいい」という選択の自由があることが、豊かで、ありがたいことだったと分かりました。

 ツレはリモートでも時間が自由になるわけではなく、昼休憩は12時から13時までの間。

 私はフリーランスのライター、これまで特に時間を気にせず昼食をとり、原稿を書いていたのが、12時に合わせてごはんの用意をする生活になったわけです。

 なんでこんな毎日料理し続けてるんだろう、と気詰まりでしょうがなかった頃、とみにありがたく思えたのが「切らないですむ肉系の商品」でした。

 こま切れになってる鶏肉、豚しゃぶ肉、生姜焼き用の肉、カットされてるベーコン、ほぐしてあるサラダチキン、スジが取ってあるササミ肉などなど。すぐ使えるって……素晴らしい! パッケージを解いたら、もう調理にかかれる。ああ、ラクだ、ラクだなあ………。

 肉切ったあとの包丁やまな板ってちょっと丹念に洗わなきゃじゃないですか。手も含めてね。あれがないのも、嬉しい。

 どうにも疲れてたとき、ふとスーパーでカット肉を目にして思わず「ありがとう……!」ってな気持ちになりました。切ってくれている、そのことが嬉しくて。

 「大変だね。切られておいたよッ」なんて肉が言ってくれているかのようで。ハイ、疲れてたなと思います(笑)。

 小さなことに思われるでしょうが、私にとっては「肉がカットされてある」って、気持ちの上ですごーく余裕が生まれたんですよ。

 ブロックで買ったほうが安いこともあるけど、余裕をくれる分のチップを払っていると私は考えることにしました。さほど値段の違わないことも多いし。

 今回の「自粛」期間中、もっと自分をラクにしてくれるものを活用して、料理しない時間も設け、自炊生活のスリム化を図らないといかんな、と熱く実感。そう、今までと同じようにできるわけない。

2020.07.15(水)
文・撮影=白央篤司