数ある映画やドラマの中で、心底好きといえる作品に出合うことはきっと奇跡に近いこと。

 そんな作品と巡り合った選者が、愛する作品の魅力をナビゲート。鑑賞するときに欠かせないおともも要チェックです。

 青春映画の上映会を積極的に開催する映画集団、グッチーズ・フリースクール。

 その教頭(主宰者)を務める降矢 聡さんが偏愛する青春映画は、ジャンルとしての定石を変化球的にひねって描く作品たちでした。


◎脇役のドラマも見応えあり

 素晴らしい青春映画は、脇役の人間ドラマまできっちり描かれている。

全力疾走シーンは 青春映画に欠かせない要素

『アメリカン・パイ』

 「登場人物たちがみんな生き生きとバカなことをやっているのが、『これぞ青春映画!』って感じで最高。

 しかも、この作品に関しては高校生だけでなく、その父親までネジが外れた行動をします。

 個人的に偏愛しているのは、主人公のひとりがセックスできそうだってときに全力疾走するシーン。

 青春映画においてダッシュシーンは欠かせない要素ですが、ここまで痛快に描くとは!」

●ストーリー

 ボンクラな童貞高校生4人組は、モテないはずの同級生が初体験を済ませたと知りショックを受け、ある協定を結ぶ。

 それは卒業までに、女子と一夜をともにすること。かくして、4人は行動を起こし始める。

『アメリカン・パイ』

監督 ポール・ワイツ
出演 ジェイソン・ビッグス、ジェニファー・クーリッジ、シャノン・エリザベス、アリソン・ハニガン、クリス・クライン、ナターシャ・リオン、トーマス・イアン・ニコラス、ユージン・レヴィ
1999年

大人の視点も入る、一夜のパーティもの

『待ちきれなくて……』

 「高校の卒業パーティの夜を描いた青春ラブストーリーですが、脇役の人間ドラマまでとても丁寧に描きこまれています。

 主人公に人生の教訓を教えてくれる天使の衣装をまとったストリッパーとか、高校時代はブイブイ言わせていたけど大学に入って落ちぶれてしまった先輩とか、そういう大人の視点の入れ方が上手くて、高校生じゃなくても楽しめる作品です」

●ストーリー

 クラスメイトが開催する高校卒業パーティに集った学生たち。そのひとり、プレストンは想いを寄せるアマンダに告白するつもりだが、彼女はスポーツマンの彼氏と別れたばかりで……。

『待ちきれなくて……』

監督 ハリー・エルフォント、デボラ・カプラン
出演 ジェニファー・ラブ・ヒューイット、イーサン・エンブリー
1998年
DVD 1,410円
発売元・販売元 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

2020.06.26(金)
Text=Keisuke Kagiwada
Illustrations=Miltata

CREA 2020年6・7月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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