数々の伝説を打ち立て爆走中の「鬼滅の刃」。

 アニメが話題になったのはもちろん、原作コミックは年間売り上げで11年連続首位だった「ONE PIECE」を超え、また主題歌「紅蓮華」を歌うLiSAは紅白に出場。

 舞台は大正時代。夜の街にはびこる鬼を狩る少年たちを描いたこの作品の魅力を、原作連載開始当初よりのファンだと語る椿 鬼奴さんに解説していただいた。


『鬼滅の刃』とは?

『鬼滅の刃』は、吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)が「週刊少年ジャンプ」で2016年より連載中の漫画。主人公の少年・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、鬼と化してしまった妹・禰豆子(ねずこ)を人間の姿に戻すべく、「鬼殺隊」と呼ばれる鬼の殲滅部隊の仲間とともに激しい戦闘を繰り広げる。2019年4~9月にテレビ放映されるや、大ブームが到来。さらに2020年にはテレビシリーズに続く物語として、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開が決定している。

少年漫画らしくない主人公の優しさ

──「鬼滅の刃」との出会いは?

 「『鬼滅』の連載前……5年前に『週刊少年ジャンプ』をまた改めて買うようになったんです。それまではいつも地方でのテレビ番組のお仕事のときに、次長課長の井上(聡)さんが『新幹線の中で読んじゃったから』ってジャンプをくれてたんです。でも番組が隔週収録だったから、どの漫画もお話が飛び飛びになっちゃうんですよ。それで毎週自分で買うようになったんです」

──そしてほどなく「鬼滅の刃」の連載がスタートした、と。

 「もう第1話からめちゃくちゃ素敵だと思っていました。『竈門炭治郎』って、私が読んできた少年漫画の中で、一番優しい主人公だと思うんです。強さを求める少年漫画の主役って、どこかワガママになるじゃないですか」

──図抜けた強さや才能って、それ自体が傲慢に映ったりしますもんね。

 「敵である鬼すらも供養する炭治郎にはそういう傲慢さがないし、だから私みたいな女性にもウケるんじゃないかなあ。それでいてバトルはちゃんと“少年漫画”なんですよね」

出し惜しみがまったくないストーリー

 「作者の吾峠呼世晴先生って、お話の進め方が本当に上手なんですよ。『柱(鬼を討伐する剣士の最高位集団)』が登場したときも、いったん柱全員に、鬼である妹の『禰豆子』を連れている炭治郎を否定させるんですよね。柱とは鬼と戦う存在だから。だけど、そのあと柱1人1人と炭治郎とのエピソードを追いかけることで、各キャラの人間味を見せるようにしたりしているんです。でもお話の進行は遅くない。むしろ出し惜しみしないし」

──連載3年で、すでに物語が最終局面を迎えてますもんね。

 「アニメの最終盤でも敵のボス・鬼舞辻無惨が12鬼月(無惨直属の鬼の上位12体)のうち下弦(12鬼月の下位6体)を一気に切り捨てたじゃないですか。普通の漫画なら、まずは下弦6体それぞれとのバトルがあって、そのあと上弦(12鬼月の上位6体)と戦わせると思うんですよ。なのに、中ボスの半分近くをナシにしたのには驚かされました」

──確かに主要キャラもモブキャラも命の重さは意外と同じ。誰もがあっさり死にますね。

 「『ウォーキング・デッド』とかもそうだし、あれが今どきのアクション作品ならではのテンポなんでしょうね。ただそういう潔い漫画だから、もうすぐ終わっちゃいそうなのが心配で……」

──連載3年で、すでに物語が最終局面を迎えてますもんね。

 「このまま一気に無惨を倒してもらいたいし、鬼化した禰豆子にも人間に戻ってもらいたいんだけど、『鬼滅』が終わっちゃったら私はどうしよう……。炭治郎たちには幸せになってもらいたいけど、お話は続いてほしい。ジレンマに悩んでます(笑)」

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2020.05.30(土)
文=成松 哲
撮影=平松市聖