特別な読書の時間を贈呈 プロが読者のために本を選ぶ
「CREA」の創刊30周年記念として読者にプライスレスな体験をプレゼントする企画の第2弾は、本誌でも好評連載中のBOOKライター・吉田大助さん、三浦天紗子さんのおふたりが、個人的に5冊の本をセレクトするというもの。
「CREA」2020年1月号で募集したところ、数多くの応募をいただきました。好きな作家や影響を受けた本、趣味、現在の悩みなど、当選者4名が書いた詳細なカウンセリングシートを元に、プロが選んだ計20冊を4回にわたってレポート。
最終回は吉田さんが、あるひとりの読者に選んだ5冊をご紹介します。
これまでのレポート
［第1回］ 自分を強くするために選ばれた本
［第2回］ 新世界を開きたいときに読みたい本
［第3回］ 迷いがちな人生に役立てて欲しい5冊
世界は美しい。そう思わせてくれる5冊
本というもの自体が、小さい頃からずっと、大きくて豊かで大切な存在であり続けているというMILKUMAさん(30代･女性)
「興味のあるものや、“好き”のその先にある時間を体感しに出かけたいのですが、叶わない今は、手芸や映画鑑賞、雑誌を読む、絵と言葉を書く、ラジオを聴くなど、おうち時間も大切にしています。
J･D･サリンジャー、シャーロット･ブロンテ、養老孟司さん、江國香織さん、さかざきちはるさん、川上弘美さんなど、好きな作家さんを挙げればきりがありません。『フラニーとズーイ』『ヴィレット』『くまのパディントン』シリーズに影響を受けました」
心が落ち着かないなかで、もう一度ゆっくり思考しなおす時間を持てる本を知りたいというMILKUMAさんのために、吉田大助さんがセレクトしてくれました。
「カウンセリングシートにたくさん書き込んでいただいた文章から、『自分には世界がこんなふうに美しく見える』という世界観をはっきりお持ちのかただと感じました。
ただ、コロナ禍の真っ只中で、その世界観に揺らぎを感じている。“回復”と“ポエジー”がキーになるのかなぁと思って選びました。新人作家の新しい才能も楽しめるかたと思い、そのあたりも多めに選んでいます」
#01 様々な愛のかたちを描く連作短篇集
『なないろ』
夏樹玲奈
バツイチでゲイの叔父･英司と彼に恋する姪･佳子。穏やかなふたり暮らしのマンションに、同居することになった未成年の勝也。いつしか愛し合うようになった英司と勝也だが、ある日勝也が何も言わずに突然姿を消してしまい……。
切なく揺れる三角関を描いた全5篇の連作短篇集。「僕は令和の『きらきらひかる』(江國香織)だと思ってます」
#02 じんわりと心に染みる全7篇
『スナック墓場』
島津輝
倉庫内軽作業を週払いで請け負って働く、中年女性ふたりのしなやかな連帯。精神障害のある《アラオさん》を見守る、商店街のチームワーク……。
「ありふれた日常に訪れる、嘘くさくない“ギリギリのポジティブ”の描き方が絶妙です」
著者は1969年生まれ。40歳で小説の道を志し、47歳で新人賞を受賞。3年かけて短編を書き継ぎ、本書で単行本デビューを果たした。ささやかだけど美しくて、すこしおかしな日常を描く短篇集。
#03 相手の「中身」だけを見て恋をする
『エヴリデイ』
デイヴィッド・レヴィサン 著 三辺律子 訳
昨日はチアリーダーで、今日は120キロの巨漢男子。意識はひとつでも毎日姿が変わる16歳のAと、優しい少女リアノンが恋をするー―。
LGBTやジェンダーをテーマに数々の作品を発表してきたデイヴィッド・レヴィサンならではの、ルッキズム批判が物語に昇華している本作。
「外見ではなく内面に恋をする、なんてことは本当にできるのか? 究極の恋愛小説です」
2020.06.30(火)
文＝CREA編集部
撮影＝平松市聖
