新型コロナウイルスの封じ込めに成功し、評価を高めている台湾。なぜ台湾はうまくいったのか? 

 その秘訣を現地在住日本人ライターが3回にわけて、徹底検証!


 2020年5月7日(木)現在で、25日連続で国内感染数ゼロを達成。感染者総数は440人、死亡者6人。感染者のほとんどは、海外からの持ち込み案件と、その関係者。感染経路不明者は10人しかいない。

 4月27日(月)の会見では、6月末の国内収束の可能性も示唆したほどで、コロナ対策の優等生として世界中から注目を集めている台湾。ちなみに、人口約2,400万人の島国である。

徹底した水際対策が行われた

 感染者数をここまで抑えられた勝因は、まず武漢をはじめとした中国との路線を早期に断ったことで第一波を抑えてきたこと。

 ヨーロッパで感染が拡大しはじめてからは、感染大国からの入境者は、隔離レベルに応じて自宅または専用施設で2週間の隔離、自宅または宿泊施設で待機での検疫を徹底し、特に欧米諸国からのウイルスを国内に入れなかったこと。

 事実上の鎖国以降も、入境者には隔離と検疫を徹底したこと。ひと月近くも国内感染ゼロを維持している現在、この水際対策の有用性は疑いようもない。

 そして、マスクとアルコール消毒液の2大防疫物資を政府が管理販売することで行き渡りやすくし、国民が落ち着いて防疫に取り組めたことが挙げられる。

 さらに、それらのプロセスを透明性を持って逐一報告することで、国民は政府を信頼し、次々と変わっていくルールを受け入れ、各々が危機意識を持って防疫につとめる……そんな官民一体の取り組みが奏功してきたといえる。

 新型コロナウイルスの対策を統括するのは、中央流行疫情指揮中心(中央感染症センター)で、衛生福利部長(厚労大臣に相当)の陳時中氏が指揮を執っている。

 この中央流行疫情指揮中心は、週末も休むことなく、毎日14時から定例会見を開き、感染状況と新しい対策を発表し、記者からの質問に答えていて、その様子はテレビやFacebookのWatchで視聴可能。中継後にはサマリーがHPやFBにアップされ、LINEに友だち登録していれば、見逃すことなく最新情報が確認できる。

 私がこの会見を見始めたのは、2月2日(日)の定例会見からである。この日は、高校以下の学校の冬休みを2週間延長することが発表され、交流のある日本人ママの間に衝撃が走った。

 駐在員の妻の場合は基本的に専業主婦で、台湾人に嫁いだ妻は働いていたりいなかったり……で、共働きが大半の台湾人家庭に比べたら、在宅して子どもを見る余裕はあるはずだが、大慌てだったのは日本人のほうである。

 インフルエンザ等による学級閉鎖の際もそうなのだが、こうした突然の休校に対して、台湾人ママは実に肝が据わっていて、動じたり騒いだりしている母親をまず見ない。

 それは、有休を取りやすかったり、祖父母を頼ることができたり、民間の受け皿があったり……という、子育て世代を支える社会環境があることが大きいのだろうと思うが、前夜に決定が出る台風休みのように、無茶振りともいえる指令に動じない国民性には感心するばかりである。この台風休みは、最大警戒レベルとなると、ホテルやコンビニなど一部を除き、会社も学校も休みとなる。経済損失も少なくないが国民の安全を優先している。

 台湾人は有事に強い。それは日頃から地震に対する避難訓練を重ねている日本人が、小規模な地震では冷静なことに通じる“慣れ”のようなものかもしれない。

2020.05.13(水)
文・撮影=堀 由美子