入団後、10年目に転機がやってきた

――うまく撮ってもらうための事前の準備や研究も必要なのでしょうか。

 タカラヅカ時代はセルフメイク、セルフ衣装で、自分でイメージをつくっていくので、センスも丸見えで自己プロデュース力が求められます。初め上級生の方のポートを見て勉強しましたが、それだけでは表現の枠が狭くなるので、海外の雑誌なども見てポージングや写真の質感、色合いなどを研究するようになりました。

 タカラヅカの枠を超えるような挑戦もしてみたいという思いが10年目ぐらいから生まれて、だんだんと写真の面白さにはまっていった感じですね。

 そうすると、下級生が「真似してみたいです」と言ってくれるようになって、それがまた励みになりました。「美弥さんがこういう風にやっていたから、私はこういうことをやってみよう」と、みんなが刺激を受けたと聞くのも嬉しくて、10年目から卒業するまでの間は、自分からやりたいことをどんどん発信するようになりました。

 卒業してからは男役という枠もなくなり、ひとりの人間としての勝負です。舞台もですが、写真からも人間性や感性が出ます。それもまた自分のプロフィールですし、写真は残りますので、写真をきっかけに私自身に興味を持っていただけたら嬉しいですね。

――撮影中は率先して動いてくださって、しかも誰よりも気配りをしてくださっていました。それはタカラヅカ仕込みでしょうか? それとも美弥さんの性格でしょうか?

 もちろんタカラヅカで上級生の方に教えていただき、学んだ部分も多いです。でも、元の性格もそうなんだと思うんです。

 舞台では、1列目のセンターに座っている方はもちろん楽しいですよね。でも、2階席にも3階席にもお客さまはいらっしゃるわけで、私は1列目のセンターの方と、3階の一番端っこの方が同じ熱量で「楽しかった!」と言って帰っていただかないと気が済まない性格なんです。

 みんなといる場でも、全員に楽しんでいて欲しいんですよね。たとえば誰かのお誕生日会で集まっているときも「あの子大丈夫かな」とか、とにかく気になってしまうタイプです(笑)。

――タカラヅカに入りたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

 小学4年生のとき、テレビの舞台中継番組で涼風真世さんを見て憧れたのがきっかけです。

――入団当初から「男役志望」だったのですね。

 もちろんです。最初テレビで涼風さんを見たときから「男役になりたい」と思いました。そこからバレエを習い始め、少しでも背が伸びるよう牛乳を一所懸命飲んだり棒にぶら下がったりしていました(笑)。

 男役としては小柄だったので、受験の面接でも「娘役でもいいですか」と聞かれたんですよ。そこで「私は絶対に素敵な男役になります!」と言ってしまい、「落ちた…」と思いましたが合格できました(笑)。

――それまではどんな子どもでしたか?

 これは初めてお話しますが、3〜4歳の頃から子役として、ドラマや映画、CMなどに出させていただいていました。撮影やオーディションのため地元の茨城から東京に通う日々で、当たり前のように芸事には触れていた子ども時代でした。

 もともとは親の意向で始めたことでしたが、ずっと続けていたので好きだったのだと思います。タカラヅカに出会うまでは、そんな日々でしたね。

2020.03.03(火)
Text=Chiaki Nakamoto
Photographs=MARCO
Styling=Marie Higuchi
Hair & Make-up=Hitomi Matsuno
Prop styling=Ai Ozaki