猫の考えてること、知りたくないですか?

 人の心を見透かしているようでもあり、まったくわかっていないようでもあり……。

 ベストセラー『ざんねんないきもの事典』シリーズの監修者としても知られる動物学者の今泉忠明さんが、猫脳の謎に迫る注目の書籍『猫脳がわかる!』から、興味深いコラムをご紹介。


猫がパニックになるのは
予想外の出来事が起きたから

 突然、猫がパニック状態に陥る、そんな様子を見たことがある飼い主も、少なくないと思います。猫が突然、走り回って大暴れする、脱糞や粗相をする、近くにいる飼い主を攻撃する、など驚くような行動をとることがあります。直接の原因は、猫に聞かないとわからないのでしょうが、何らかのハプニングが起こり、極度の不安や恐怖を感じると、猫はパニック症状を見せるのです。

 人だと、パニック障害といわれる病気がありますね。近年、罹患者が増えており、現代病の一種といえるかもしれません。突然、心臓がドキドキする、過呼吸のような発作がおきるなどして、このまま死んでしまうのではないかという不安に襲われる病です。パニック障害は、脳内神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンが関係していて、脳内ホルモンのバランスの乱れが原因と考えられています。

 猫のパニックは、人のパニック障害とは異なりますが、猫脳内の、不安や恐怖をつかさどる扁桃体が強く反応していることは確かでしょう。扁桃体が働き過ぎると、脳内神経伝達物質のセロトニンが不足してしまうのです。

 どちらかというと、猫はパニックに陥りやすい動物です。それは、慎重で警戒心が強く、周囲の変化をつねに気にしているため、些細なことに驚きがちだからです。

 猫がパニックになるのは、身体に紐状のものが絡まってしまった、突然モノが落ちてきた、あるいはプラスチックのレジ袋の持ち手に足が引っかかってしまった、など。自身には予想外の「怖い」出来事が起こったときです。とくに、もともと怖がりで隠れがちな猫、経験の少ない若い猫、刺激に慣れていない完全室内飼いの猫が、パニックになりやすいといわれます。

2020.01.04(土)
文=今泉忠明