俳優たちが語る大杉漣との絆

助演男優賞は、大杉漣さんと松重豊ら『アウトレイジ 最終章』組が受賞。ピエール瀧は「たけしさんにこうして褒めていただけるのが、こんなに嬉しいのか」と感激の面持ちの中、「組長、いただきました!」と大杉さんの役名で呼びかけた。大森南朋は「この賞を大杉漣さんと取れたことを誇りにして生きていこうと思います」と挨拶。

 話を『アウトレイジ 最終章』に戻すと、助演男優賞に選ばれたのは大杉さん、松重豊、大森南朋、ピエール瀧、金田時男の5人。主演男優賞には、西田敏行と塩見三省が輝いた。

 それぞれ大杉さんへの思いを口にしたが、松重豊は「本当に残念ですけど、しめっぽいことが嫌いな漣さんなので、晴れやかにいきたいと思います。映画デビューした時、漣さんに映画の楽しさを教えていただいて。『こんな華やかな場所に一緒に立てるんですね』という喜びを、つい4日ほど前に千葉の海で話していました」と語り、「こんな機会を与えてくれてありがとうございます。漣さん、これからも日本の映画を、僕たちを見守ってください。ありがとうございました」と天に向かって明るく感謝の言葉を述べた。

『アウトレイジ 最終章』が遺作となってしまった大杉漣さんの映像が会場に流れると、さすがに世界の北野は目頭を押さえていた。開会の挨拶でも「今日は大杉漣さんのこともあって、あまりふざけたことを言ってる場合じゃない」と言いつつ、その後はジャニー喜多川ネタや斉藤由貴ネタ、このハゲネタなど、いつもの調子に。

 大杉さんや、病から復帰してヤクザを演じた西田敏行と塩見三省らとの仕事を通し、「映画の半分以上は役者さんの力なんですよ。こっちに演出させてくれない迫力があってこそ、いい映画が作れる。それがこの映画」と語った世界の北野。かつては役者は演技をするな、というのが持論だったが、かなり変化したことを自分でも認めていた。

助演男優賞と新人賞をW受賞した『アウトレイジ 最終章』の金田時男。日韓の闇社会に通じるフィクサー、張会長を演じた御年80歳の新人は、韓国をルーツに持つ実業家。ホテル、パチンコ屋から金融機関まで持っているらしい。何度も「ホンモノ(のフィクサー)ではないですよ」と言われていた。

 また、下積み時代を互いに知る綾小路きみまろをはじめ、芸人たちへの愛や、ビートたけしショーの側面もたっぷりで、やっぱり何をおいても毎年参加したい、と思わされた。同じことを、是枝裕和監督もスリッパで司会のガダルカナル・タカに叩かれながらも、語っていた。

このハゲ騒動の豊田真由子元議員は来場しなかったため、代理で元秘書が受賞。というのは嘘で、右は東スポの太刀川会長。北野武に監督賞を授与すると「私もこの映画(『アウトレイジ 最終章』)ほどじゃないですが、限りなく危ない世界に関わっておりまして」と自虐コメント。太刀川会長は昭和の大物フィクサー、児玉誉士夫の秘書だったことで知られる。ホンモノ。
左:慎吾ちゃんときみまろ師匠の間に見えるのは、先日引退したザ・グレート・カブキではなく、引退した小室哲哉の代理で功労賞を受賞したエイベックスの長谷川氏。
右:最後におまけ。今年の米アカデミー賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』の監督ギレルモ・デル・トロと、マダムアヤコ。3年前、CSムービープラスでのカンヌ取材時のもの。KAIJUこマスコットのウオ子が、もしや半魚人の元になったのかもしれない。ウオ子、全魚人だけど。

 やっぱり、日本で一番重要な映画賞なのは間違いないので、来年はぜひ吾郎ちゃんと草なぎ君にも来てほしいなあ。そしてCREA WEBにも早く登場してね。待ってます!

石津文子 (いしづあやこ)
a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。執筆以外にトークショーや番組出演も。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。長嶋有さん主催の俳句同人「傍点」メンバー。俳号は栗人(クリント)。「もっと笑いを!」がモットー。片岡仁左衛門と新しい地図を好む。

2018.03.24(土)
文・撮影=石津文子