楽しく盛り上がったチャリティー・イベント

 人の営みなんて、巨大な自然の前では所詮はかないものだけど、とにかく立ち上がらないことには何も始まらない。そうやって日本人はこれまでもがんばってきたのだろう。

 都市部と郊外部とでは事情も異なっているだろうし、もちろん一概には括ってしまうことはできないだろうけれど、4日間熊本の街を歩き回って、いろんな人たちと話をして、個人的にはしっかりと前向きの印象を受けた(地震発生から間もない時期に訪れていれば、また違う印象を持ったのかもしれないが、住民のみなさんがまだ被害の渦中におられるときにやってきて、かえって迷惑をかけることになってはいけないと思ったので、5カ月の間を置いて訪問することになった)。

 今回の、9月初めの熊本行きの目的のひとつは、熊本復興支援「するめ基金」活動の一環として、チャリティー・イベントを催すことだった。都築響一くんと吉本由美さんと僕とで集まって何かをやって、その入場料を「するめ基金」の一部とすること。それで「早川倉庫」という催し物会場(昔の醸造所を改築したとても興味深い施設だ)を借りて、250人近くの人を集め、トークと朗読会みたいなことをやった。遠くはわざわざ青森からみえた方までいて、3時間ほどの「集会」だったけど、みんなでなかなか楽しく盛り上がりました。お酒でも飲みながらリラックスしてやれればよかったんだけど、事情があってそれはできなかった。

会場外の告知のするめイラストは故・安西水丸さんによるもの。

 もうひとつ、実際に熊本に来て、その現在の状況を目にして、全国のみなさんから寄せられた「するめ基金」をどのように使うか、その使途を決めるという目的もあった。大事なお金だから、もちろん大事に慎重に扱わなくてはならない。というわけで、3人がそれぞれに「私は熊本復興のこういうところにお金を使いたい」という意見を述べあった。寄付の受付は年末まで続くので、最終的に締め切られた段階で、集まったお金の具体的な使い途をあらためてご報告したいと思う。段階に応じて『クレア』に活動レポートをアップしますので、どうかごらんになってください。(後編に続く)

CREA編集部より

 CREA編集部では、熊本県を震源とする「平成28年(2016年)熊本地震」におきまして、被災地のみなさまの支援を目的とした「CREA〈するめ基金〉熊本」を立ち上げました。

 被災地のみなさまには、あらためてお見舞い申し上げます。

 開始以来、たくさんの方からご寄附をいただいております。基金の趣旨にご賛同いただいた方々に厚く御礼申し上げます。

 支援金の募集は、2016年内を持って締め切らせていただきます。

 12月2日現在のご寄附の総額は13,005,309円です。

 使い方や支援先については、今後、随時ご報告させていただければと思います。

 支援金の募集は締め切りますが、これからもこの活動は続けていきます。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

2016年12月6日 CREA編集部

» CREA〈するめ基金〉熊本とは?

村上春樹(むらかみはるき)
1949年、京都府生まれ。79年『風の歌を聴け』でデビュー。最新の長篇小説は2013年の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、長篇エッセイは『職業としての小説家』。

都築響一(つづききょういち)
1956年、東京都生まれ。93年、『TOKYO STYLE』を発表。96年、『ROADSIDE JAPAN』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。有料メルマガ『ROADSIDERS' weekly』を毎週発行。

吉本由美(よしもとゆみ)
1948年、熊本県生まれ。作家・エッセイストにして『anan』『Olive』『クロワッサン』で活躍したスタイリスト。著書に『みちくさの名前。』など。熊本発文芸誌『アルテリ』で久々に小説を発表。

CREA〈するめ基金〉熊本

2016.12.05(月)
文=村上春樹
撮影=都築響一
旅の案内=吉本由美

CREA 2016年12月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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