人気コミック「ONE PIECE」と歌舞伎がコラボした、新橋演舞場公演を映像化した「シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎II ワンピース』」。新たな演出・編集を加えた本作で、“麦わらの一味”の人気キャラ・サンジと、イナズマを演じたのが中村隼人。ドラマ「せいせいするほど、愛してる」(TBS)でも注目を集めた彼が、新たな挑戦について語ってくれました。

玉三郎さんの言葉を胸に、本格的に歌舞伎の道へ

――まずは、隼人さんが初めて歌舞伎俳優の家系に生まれたことを実感したエピソードを聞かせてください。

 小学校低学年のときだと思うんですが、水曜日と土曜日に日本舞踊を習っていたので、(学校が休みになる)土曜日が僕にとっては休みじゃなかったんです。日本舞踊は3歳のときから習っているので、それに関してはまったく疑問を持たなかったんですが、そのときに、ふと「なんで、僕だけ友達と遊べないのかな?」と思いました。

――ちょうどその頃、02年「菅原伝授手習鑑 寺子屋」で初舞台に立つわけですが、そのときに将来的に歌舞伎の道に進むことを決めたのでしょうか?

 歌舞伎俳優の家ですから、みんな初舞台は経験することが多いのですが、そこから本格的に歌舞伎の世界に進むか、進まないかを選ぶんです。僕もそのときには決めていませんでしたし、サラリーマンや弁護士など一般の職に就かれる方もいますね。ちなみに、僕はその後も両親から「歌舞伎の道に進みなさい」と言われたことがなかったんですが、高校受験を機に、「今やっていることを、もっと掘り下げていきたいので、(芸能と勉強を両立できる)堀越学園に行きたい」と思ったのがきっかけです。

――“今やっていることを、もっと掘り下げる”とは、具体的にどういうことでしょうか?

 幼い頃、(坂東)玉三郎のおじさまと同じ舞台に立たせていただいたときに、毎日ご指導を受けていたんですが、「女方をやるなら、もっと華やかに、たおやかに演じて」とおっしゃっていただいたのです。正直、そのときは何を言われているのか、理解ができず、辞書を引いたぐらいです。そのことが頭のどこかにあって、それについて、さらに掘り下げようと思ったんです。

2016.10.21(金)
文=くれい響
撮影=深野未季
スタイリスト=九(Yolken/東京都港区元麻布3-1-35 グランカーサ六本木B2F、03-6804-2624)
ヘアメイク=佐藤健行(HAPP'S)