この5年で食べた仔羊の中では最高の味!

 さて、席に着くと料理のスタート。

完成度の高いアミューズ。

 さすがは渡辺シェフの店。一口目からテーブル全員を唸らせてくれました。アミューズが最高だったのです。

 グラスに入っているのは、「赤肉メロンのガスパチョ」。冷製のさっぱりとしたスープです。

 オレンジ色の小皿は手前から、「大心堂雷おこしとフランスの出会い」。なんと! 浅草名物の雷おこしの上に、ノルマンディーバター、スペイン産のアンチョビ、青唐辛子がのっているのです。和、だけどフランス料理の香りがして、タイトル通り、雷おこしとフランスが素敵な出会いをしています。サクサクした歯ごたえの心地いい雷おこしは、なんてバターに合うのでしょう。驚きです。

左:浅草名物の雷おこしの上に、ノルマンディーバター、スペイン産のアンチョビ、青唐辛子がのった「大心堂雷おこしとフランスの出会い」。
右:最中の皮に、クリームチーズ、バジリコ、塩昆布、アーモンド、丹波の黒豆がのった「駒形 種亀最中のカナッペ」。

 次は「駒形 種亀最中のカナッペ」。最中の皮の上には、クリームチーズ、バジリコ、塩昆布、アーモンド、丹波の黒豆。バジルやオリーブオイルの風味が最中の皮に合うことにも驚きました。塩昆布はいいアクセントです。

 そして「グリーンオリーブのマリネ モロッコ風」。オリーブ一粒を口に入れると、サフラン、クミン、ミント、コリアンダー、オレンジ……、様々な香りが絡み合って広がるのです。

 この一皿、4品は、本当に完成度の高いものでした。

 素晴らしいアミューズのあとに出たのは、「両国江戸蕎麦ほそ川自家製粉蕎麦粉のフランス風そばがきとベルギーキャビア」。

アミューズのあとに出た「両国江戸蕎麦ほそ川自家製粉蕎麦粉のフランス風そばがきとベルギーキャビア」。

 香りは紛れもなくそばがきなのですが、口当たりはフレンチ。両国にある蕎麦店、ほそ川は、渡辺シェフが通うお気に入りの店なのです。

鮎を使った「江戸東京野菜と旬の魚介類の一皿 江戸東京野菜 馬込半白きゅうりとスイカのマリネ」。

 その後も、片面だけを焼いた鮎や、厨房に導入されたV.C.C.という最新器具(蒸す、焼く、煮るなど7種類の料理ができるのだそう)を使って調理されたフォアグラ、もっちりとしたスズキなど、いろいろな料理が続きます。

フヌイユの枝とともにゆっくりと焼き上げた鱸(スズキ)。ルイユ入りインカの目覚め、タプナードのジュ、アネットのピストゥ フヌイユのレモン風味ピクルス。
活車海老のコンフィ、とうもろこしの三変化と海老味噌のスュックと共に生ウニを添えて。

 そして、私がメインにチョイスしたのは、仔羊。あみ脂に包まれて、信じられないくらい柔らか。ラベンダーの香りをまとい、この5年くらいで食べた仔羊の中では最高と断言できます。

オーストラリア産仔羊。ラヴェンダーの花を散らしクレピネットに、枝豆のアーモンドミルクとじと水茄子のサラダ。

 こんな調子でデザートまで。食事をスタートした時には明るかった空もすっかり暗くなり、ライトアップされたスカイツリーは一段と美しく輝いています。トータル3時間というところでしょうか。

浅草壽々喜園の抹茶とフルーツの一皿。
時おり通る屋形船とライトアップされたスカイツリー。

 1万円のワインコースをつけると、お値段はそれなりです。単においしいものを食べに行くだけではなく、浅草の夜をフランスに行った気分で楽しむという、大きなイベントとして楽しむにはお勧めします。

ナベノイズム
所在地 東京都台東区駒形2-1-17
電話番号 03-5246-4056
営業時間 火~土曜 12:00~15:00(L.O. 13:30)、18:00~23:00(L.O. 21:00)/日曜 12:00~15:00(L.O. 13:30)
定休日 月、第4火曜(変動あり)
予算 ランチ10,000円、ディナー20,000円
[2016年7月訪問]

浅妻千映子(あさづまちえこ)
1972年東京生まれ。聖心女子大学卒業。鹿島建設勤務を経て、フードジャーナリストに。「dancyu」などの雑誌や書籍で執筆活 動を行う一方、料理研究家としてワインスクールであるアカデミー・デュ・ヴァンで料理講師も務める。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。

Column

新店来訪! 美味しい出合いに一番乗り

ニューオープン、シェフやメニューが変わった店、面白い企画を立ち上げた店……などなど、なにかと「新しい」店を一番乗りで紹介するページ。「美味しい出合い」にご注目ください!

2016.08.15(月)
文・撮影=浅妻千映子