伝説的なピアニストたちとのコラボレーション

ラ・フォル・ジュルネ常連のピアニスト、ボリス・ベレゾフスキー。音楽祭の原点はピアニストとの友情。(C)Marc Roger

 ルネ・マルタンが企画した最初の大きな音楽祭は、毎年南仏プロヴァンスで行われるピアノのフェスティヴァル、「ラ・ロック・ダンテロン」で、1981年の初回から大きな成功を収めた。

 そこに参加していたアーティストのリストを見ると、目もくらむような名前ばかりが並ぶ。伝説のピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルに、ヴラド・ペルルミュテール……2年目からはマルタ・アルゲリッチやクリストフ・エッシェンバッハ、クリスティアン・ツィメルマンも参加している。

 「全員が世界一と呼べるピアニストでした。ヴラド(・ペルルミュテール)のためには10年間のリサイタルの企画もしたんです。リヒテルに会ったのは私が25歳のときで、楽屋に入って彼と奥様のニーナさんに会い、すぐに気持ちが通じた感じがしたのを覚えています。そこから、私が企画した音楽祭すべてにリヒテルは出てくれました。毎年トゥーレーヌの田舎で行っている『ミレの穀物蔵』音楽祭にも出演してくれて……彼との友情は忘れられないものです」

2016年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに登場する和太鼓アーティスト、林英哲。(C)Marc Roger

 自然の中で行うフェスティヴァルが大好き、とも語るマルタン。

 「田舎にはフェスを行うのに最高な場所がたくさんあるんです。ラ・ロック・ダンテロンでは水の上にステージをしつらえてコンサートをやるんですよ。自然こそが音楽に相応しい場所なのではないかと思うことがあります」

 2016年のラ・フォル・ジュルネのテーマはまさに「自然」で、マルタンのイマジネーションが炸裂するプログラミングで構成されている。

 ドラマー出身の彼が選んだ和太鼓のアーティストや、アフリカン・ビート集団まで登場する、エネルギッシュな「祭り」が展開され、既に本拠地ナントでは大好評を得た。

日本にもやってくるアフリカン・ビート集団「ドラマーズ・オブ・ブルンジ」はナントでも大きな反響を得た。(C)Marc Roger

2016.04.26(火)
文=小田島久恵
撮影=釜谷洋史