おらが丼を食べたら染め物に挑戦!

「房総美味いもの屋 藤よし」には駐車場もあるので、車で立ち寄ることもできる。
「おらが丼(房総三彩丼)」。手前からアジ、鯛、アワビ。ほかに、金目鯛の刺身を生卵と醤油で和えて自分で丼に載せる「金目鯛ぶっかけ丼」も人気だ。どちらも数量限定。

 ランチは、太平洋に面した外房の「房総美味いもの屋 藤よし」で、おらが丼にした。「おらが」というのは、鴨川市周辺の方言で「我が家」という意味。鴨川市では、現在46店舗の飲食店が、オリジナルの「おらが丼」を提供している。

 「房総美味いもの屋 藤よし」のおらが丼は、こぶりの丼が3種類の房総三彩丼。それぞれに地元鴨川で水揚げされた、アジのたたき、鯛、アワビの刺身が載っていて豪華だ。

房総美味いもの屋 藤よし
所在地 千葉県鴨川市横渚1222-1
電話番号 04-7099-0840
URL http://www.shiosaiichiba.co.jp/fujiyoshi.html

萬祝染めの大漁祝い着姿の漁師のみなさん。凄い迫力!

 次に向かったのは、同じ鴨川市に、古くから伝わる染物の「鴨川萬祝染 鈴染(かもがわまいわいぞめ すずせん)」。ここでは、萬祝染を体験することができる。

 「萬祝」というのは、もともと桁外れな大漁のお祝いのことだったが、その後、萬祝の際、そして、豊漁を願う初詣の際に揃って着る祝い着を指すようになったという。房総半島で江戸末期に発祥したと言われているが、昭和初期まで、青森県から静岡県までの太平洋岸の地域に普及していた。

顔料は大豆の汁で溶いてある。

 「鴨川萬祝染」の製造工程は、簡単に説明すると、以下の通り。まず、型紙に下絵を描き、小刀で型を彫る。次に、精錬した布に下絵を彫った型紙を使ってのりで型付け、大豆の汁で溶いた顔料で色を付けていく。そして、絵柄の色を定着させ、のりで保護してから布全体を染め、水に漬けてのりを取り、酸に漬けて色を定着させる。最後に目や口に筆を入れれば完成だ。

左:色の付けかた、ぼかしかたなどをていねいに説明してくださる鈴木幸祐さん。
右:色を付けていくと、のりの型が見えなくなるので、これでいいのか不安になってくるが、翌日水洗いすると魔法のようにキレイな絵が現れる。

 萬祝染め体験では、最初にスライドで萬祝染めの歴史や技法をお勉強。そして、職人の鈴木幸祐さんが、実物を使って染めかたを見せてくださり、絵柄を選んで色を付けていく。私は、鈴木さんが見せてくれた見本と同じ絵柄を選んだ。とはいえ、見本通りにする必要はなく、色選びもぼかし方も自由だ。

萬祝染め体験はこの6種類の絵柄から選ぶことができる。色は見本通りにする必要はない。
帰宅後、洗って乾かすとこんな感じに。よかった、ちゃんと絵柄が現れた(笑)。

 鈴木さんが波や鯛に色を重ねてぼかしていく筆さばきを見たときには、「なるほど、そうやればいいのね」と、簡単そうに思ったものの、やっぱり実際にはうまく描けない(当たり前だ、笑)。

 「少しくらいはみ出しても大丈夫ですよ。皆さんが色を付けているのは裏ですから、最後洗うと輪郭が現れますから」と言われても、何だか下手な塗り絵にしか見えない(笑)。鯛のお腹のぼかしもうまくできない。

 「先生、ここのぼかしはどうしたら?」と、素直に指導を仰ぐと、鈴木さんが私の色の上をなぞってくれた。そのたった一筆で鯛の立体感が変わった! さすがの職人技だ。色を付け終わったところで、ドライヤーで乾かしてもらって持って帰る。一晩置いてのりを洗い流せば完成だ。

 萬祝染めの技法を受け継ぐ鈴木幸祐さんは、「鴨川萬祝染 鈴染」の三代目。息子の理規さんは、2012年、大学4年生の夏にアメリカ大陸を横断した際に、カリフォルニア州モントレーで祖父栄二さん制作の大漁旗に出会ったことがきっかけとなり、就職の内定を断ったという。家業の職人技を絶やしてはならないと決心したのだ。なんて素敵なお話!

三代目鈴木幸祐さんと息子の理規さん。伝統の職人技を守り続ける素敵な父子だ。

 2014年には、ふたりで協力して萬祝染体験施設を造った。そして、萬祝染を紹介するスライドを作ったり、SNSで発信したり、次々と新しいアイデアで萬祝染めを広く知ってもらうべく努力を続けている。そして、「萬祝染元 鈴染」は、2015年に創業90周年を迎えた。鴨川に来たら、ぜひ自作の萬祝染を持ち帰ってほしい。

鴨川萬祝染 鈴染
所在地 千葉県鴨川市横渚620-1
電話番号 04-7092-1531
URL http://www.awa.or.jp/home/suzusen/
Facebook https://www.facebook.com/kamogawa.suzusen

2016.02.09(火)
文・撮影=たかせ藍沙