チーズの王様になるまでに

 チーズ工場の朝は、とれたて新鮮な牛乳が到着するところから始まります。

 新鮮な牛乳と、昨夕から一晩おいて分離した脂肪分を取り除いた牛乳をあわせて、大きな銅鍋に入れて加熱します。

スピーナという道具を使って、牛乳成分を細かく砕いていきます。

 牛乳の成分が固まってきたら、それをかき混ぜながら、米粒よりも細かく砕いていきます。どの程度混ぜるか、細かくしていくかは、熟練した職人さんの目と感覚が頼り。この作業は、日々の気温の違いや、とれる牛乳の成分も季節、個体、餌となる牧草の具合によって違うので、機械で一定に作ればできるものではなく、熟練した人の見極めが必要になってくるのです。

左:チーズの元となる凝固した牛乳成分を掬い上げ、2つに切り分けます。
右:それぞれ麻布に包み、水を切ります。

 細かく砕いた成分を麻布ですくい上げ、水分を切ります。

左:重しをかけて更に水を切っていきます。
右:水切りしたチーズの元をステンレスの器に移し、成型します。

 布でくるんだチーズの元を容器に入れ、重しをして一晩、上下をひっくり返しつつ水分をさらに切っていきます。その後、海塩を溶かした水につけ込みます。

左:熟成を待つチーズたち。
右:検査に合格し「パルミジャーノ・レッジャーノ」の刻印を押されたチーズ。

 3週間、塩水につけ込んだ後、貯蔵庫にてじっくり熟成させていきます。12カ月たったところで検査をして、検査に合格したもののみに証の刻印が押され、晴れて「パルミジャーノ・レッジャーノ」となります。

 そこで出荷されるものもありますが、さらに熟成期間をおくものもあります。熟成期間は約2年、または約3年をおいたものもあります。熟成期間につれ、アミノ酸の結晶化が進み、シャリシャリとした食感が生まれてきます。この結晶はまさに旨みの結晶、噛み締めるほどに広がる豊かな味わいは、チーズの王様と呼ばれるにふさわしいおいしさです。

ワインのおつまみにもぴったりのパルミジャーノ・レッジャーノチーズ。

 そのまま食べてももちろんおいしいですが、パスタやスープなどの料理にちょっと足すだけでおいしさをグッと引き上げてくれます。生産地の郷土料理には、パルミジャーノ・レッジャーノチーズを使った料理がたくさんあります。

 そのおいしさは、このチーズを誇り、守ってきた生産者の方たち、そしてこのチーズを愛し食べてきた地域の人たちが作り上げてきたものなのですね。日本でも輸入食材店やイタリア料理店で取り扱っており、口にする機会も多いパルミジャーノ・レッジャーノチーズ。おいしいものをこよなく愛するイタリアの人々の情熱のおいしさ、ぜひ味わってみてください。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブックはこちら。 https://www.facebook.com/chococogogo

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文・撮影=藤原亮子