情熱的なトスカはまさに「ローマの女」

野田ヒロ子(のだひろこ)
東京音楽大学卒業、同大学研究科修了。1996年から2002年までイタリアのヴェローナに留学。1998年、ブダペスト国際声楽コンクール第2位入賞により、ハンガリー国立劇場での『ラ・ボエーム』においてミミ役でオペラデビュー。1999年、イタリアのロゼトゥム・プッチーニ・オペラ・コンクール特別賞受賞。2002年第38回日伊コンコルソ優勝。

――トスカは情熱的な女性ですが、「劇場の歌姫」という設定ですので、職業的にはおふたりと同じになりますね。

野田 でも、実生活とはだいぶ違いますよね。トスカはイタリア人ですし。

佐藤 今の段階では、自分にまだ色気が足りないかもと思っています。『蝶々夫人』の蝶々さんは日本が舞台ということで、まだ自分たちの生活からヒントを得て作っていけた部分もあったと思いますが、トスカはまだまだわかりづらい部分が多いですね。

野田 ふだんの生活にはない設定や感情表現がたくさんありますからね。私も佐藤さんもイタリアに留学をしていましたが、北イタリアとローマではまた感情が違うんです。私はヴェローナにいたので、歌手になる前のトスカの気持ちは理解できるんですが、「ローマで生きている」という感覚を理解するのが難しい。イタリアは土地によって人の性格がものすごく違うんです。

――ローマは……。

佐藤 激しいです(笑)。すごく仲のいい子がローマ人なんですよ。まさにトスカみたいな人で、カヴァラドッシみたいな恋人と付き合っているんですが……見ていて大変そうだなと。ジェラシーがすごいし、しょっちゅう言い合いをしているし、そのまんまドラマになりそうな二人です。映画のセットで生きているみたいな(笑)。

野田 怒り方にしても、北イタリアとローマの女では、ジェスチャーが違いますね。

佐藤 オーケストラの最初の3つの和音も、まさにローマの音だと思います。楽譜に既にローマの景色が書き込まれているんです。

2016.01.27(水)
文=小田島久恵
撮影=佐藤 亘