佐々木俊尚のニュース解体新書

佐々木俊尚のニュース解体新書

140文字から1万文字に大幅アップ!
ツイッターの制限文字数が増えるわけは?

【KEY WORD:ツイッターの制限文字数】

 ツイッターが「140文字まで」という制限を取り払い、1万文字まで書き込めるようにするらしいということが報じられています。

 1万文字というのはたいへんな文字数で、長大な雑誌記事ぐらいあります。大きな文字で書かれている薄い新書本がだいたい7~8万文字ぐらいですから、1万文字ツイートを7つか8つ集めれば、1冊の本ができてしまうぐらいになるわけですね。

 「そんなにたくさん書くことない!」「140文字までだから気楽に書けたのに」とネット上では批判的な意見もたくさん出ています。今のところ正式発表ではありませんが、ツイッター社はどうしてこんなことを考えているのでしょうか。背景にはふたつの事情があります。

 ひとつは、英語の世界だと140文字というのは短すぎるということ。漢字かな交じり文の日本語と比べると、情報量は3分の2ぐらいの印象ではないでしょうか。そこで米国などでは最近、ツイッターで「スクリーンショッティング」という手法が流行しています。これはワープロソフトなどで長い文章を書いて、その画面をキャプチャ(スクリーンショット)して、画像をツイッターに投稿するというやり方。これだと140文字の制限を超えてたくさんの文字を投稿できるというわけです。

 だったらツイッターで正式にもっと長い文章を書けるようにすれば? ということ。実際、CEOのジャック・ドーシーさんはツイッターでこう発言しています。「スクリーンショッティングの代わりに、もし実際に長いテキストを文字として投稿できたらどうだろう。検索して、ハイライトもできるテキストだったら」。

外部サイトに行くのも面倒な人のために

 もうひとつは、フェイスブックとの戦い。最近、フェイスブックは「インスタントアーティクル」という機能に力を入れています。これはニューヨークタイムズやバズフィードといった大手メディアの記事を、フェイスブックの画面上で全文読めてしまうというものです。これまで、外部のメディアの記事は見出しや要約だけをフェイスブックの中で紹介し、クリックすると外部メディアのサイトに飛んで、そこでようやく全文が読めるようになっていました。

 しかし読者の注意力はますます分散していて、わざわざクリックして外部のサイトに行くのさえ面倒だと感じる人が増えています。だったらフェイスブックの画面の中だけで全文読めるようにすれば、面倒くさくなく、より多くの読者に全文を読んでもらえる可能性が高い。そこでこのインスタントアーティクルという機能が注目されるようになったのです。

 フェイスブックではしばらく前から、動画もフェイスブック内で楽しめるようになっています。それ以前はリンクをたどって外部のユーチューブなどのサイトに行かないと動画が見られなかったのが、フェイスブックから出ずに動画が見られるようになりました。それと同じことをテキストの記事でも同じように、インスタントアーティクルで実現しようとしているのです。

 いまSNSの業界では、このようにさまざまなコンテンツをSNSの内側ですべて楽しめるようにする「囲い込み」が進んでいます。しかしツイッターは140文字という制限があるため、それ以上の長い記事はツイッター内で読めません。そこで文字制限を取り払い、フェイスブックのインスタントアーティクルに対抗してツイッター内で長文記事を読めるようにしようという狙いのようです。

 しかしツイッターの魅力は、140文字という制限の中でさまざまな表現を競うというところにありました。この制限が取っ払われてしまうと、果たしてツイッターの命運はどうなるか。今後のSNS競争に注目です。

佐々木俊尚(ささき としなお)
1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『自分でつくるセーフティネット』(大和書房)など。
公式サイト http://www.pressa.jp/

2016.01.18(月)

文=佐々木俊尚

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