去る10月20日、パリのオルセー美術館が2年に及ぶリノベーションを終え、リニューアルオープンを果たした。

エドゥアール・マネ「草上の昼食」

 今回の改修工事の中心は5階にある印象派・ポスト印象派の展示室。従来の展示室はベージュの壁と大理石の床の明るくモダンな空間だったが、改修後は壁面を落ちついたトーンのグレーで統一し、床も濃いブラウンのフローリングになった。

 シックで静謐感が強調されたスペースは、明るい色彩に富んだ印象派の作品をいっそう際立たせている。  

 敢えて白い壁を用いなかった理由について館長のギ・コジュヴァルは、「白い壁は20世紀絵画や現代アートには相応しいが、それ以外の作品を殺してしまう」と語っている。エドゥアール・マネの「草上の昼食」や「オランピア」、オーギュスト・ルノワールの「ム ーラン・ド・ラ・ギャレット」といった有名な作品も、今までとはまったく違った雰囲気のなかで展示されている。

 ちなみに展示室に置かれたガラスのベンチは日本人デザイナーの吉岡徳仁の手による「Water block」。抑制の効いた空間に置かれたガラスのオブジェのようなベンチが美しい。

 今年12月で開館から25年となるオルセー美術館は、今後も館内のリニューアルを次々と進める予定だ。改装の最終的な完了は2015年頃になるという。

 旧き良き時代のフランス絵画を展示しながら、時代とともに進化する美術館の姿を見るのは興味深い。

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2011.11.30(水)
text:Fumiko Suzuki