メジャーからインディーズに戻った理由とは?

山口 SCANDALをデビュー前からプロデュースしているキティの大平太一は、僕の高校の1年上の先輩で、高校時代は一緒にバンドをやっていたし、彼がリーダーだったバンド「マーキー・ムーン」がアマチュア時代にThe REDSという名前で活動していた時の私設マネージャーは僕でした。もう四半世紀以上前のことですが(笑)。

伊藤 そうですよね。大平さんにはコーライティングキャンプで伊豆スタジオを使わせてもらったり、キティの新人バンドの制作に参加させていただいたり、色々とお世話になっています。彼が育て上げて、とても大切にしているSCANDALのシングル楽曲に、バンドマンの曲を採用したというのは意外でした。

山口 彼は業界の風評とか音楽シーンにおけるポジショニングには無頓着で、「良い曲かどうか」だけでジャッジする人なので、大平太一に認められたということは、楽曲力が高いだけでなく、音楽に向かう姿勢が真摯なんでしょう。

伊藤 ですよね。そのSUPER BEAVERは今作から3カ月連続シングル発売だそうで、4月にはワンマンライブを予定していますね。

山口 今の時代に、インディーズでシングルを3カ月続けて出すというのは、どういう意図なんでしょうね? 楽曲に自信があることの表れなのかな?

伊藤 3作ともA面は新曲ですが、カップリングはすべてライブ音源なので、あまり制作費を掛けず、でもバンドが動いている感を出す。プロモーションできる話題と環境作り、言ってしまえば4月のワンマンへの集客を意識した販促意図が大きいでしょうね。3曲を聴かせてもらったけど、「ことば」「うるさい」「青い春」いずれも素晴らしいと思いました。彼らのすべての曲に共通する人間関係、存在意義が強く主張されていて、オレの世代だけじゃなく10代にも50代にも刺さるんだろうなって思えた。男っぽいけど男臭すぎず嫌味じゃなく、老若男女問わず求めている心にちゃんと置いていってくれる、そんな曲でした。

山口 そうですね。良い意味でオーソドックスなJ-Rockのバンドだなと思います。

伊藤 よくありがちなヴォーカリストがバンドの圧倒的フロントマンでありプロデューサーであるのとはちょっと違って、ギタリストの柳沢亮太がバンドを引っ張っているみたいですね。今3作も作詞作曲はすべて彼だし。あと彼らの面白いところは、2009年にメジャーデビューしながらも2011年に所属していたレーベル・事務所を離れ、2012年には自主レーベルI×L×P×RECORDSを立ち上げていること。同年4月にシングル「歓びの明日に」をライブ会場限定リリースしているんだけど、どんな経緯があったのか興味深い。

山口 本当に何の事情も知らないので、逆に発言がしにくいのですが(笑)、経歴だけから推測すると、ソニーでデビューして、「NARUTO」という大型アニメのタイアップまでとれたけれど、セールス的な結果が出なかったようですね。近年はレコード会社が、売れなくても音楽性を信じて粘って頑張るというケースは皆無なので、約2年半の期間で、シングル3枚、ミニアルバム含めてアルバム2枚をリリースしていて結果が出なくてやめるというのは、普通のケースかなと思います。

2016.01.14(木)
文=山口哲一、伊藤涼