知恩院の祈りの美

伴僧の緋色の袈裟。

 そんなご縁で数々の法要にお参りさせていただきました。

 そこに見たのはお浄土への憧れです。雅楽の音色と声明が織りなす典雅な法要は、お浄土を具現化しているかのように華やかで荘厳なものでした。

 まず目を引いたのは法衣の上品な色の美しさです。それは法要や役職によって様々な色や形の種類があります。例えばお導師様は緋色の衣をお召しですが、年若い伴僧はお導師様に合わせて緋色の袈裟。心憎いカラーコーディネートです。

 京の都が育んだ染色、織物職人の最高の技術と粋を法衣に見ることが出来ます。

 そして、立ち居振る舞いの美しさも、茶道のお手前や、お能の佇まいのように洗練されたものです。お焼香の作法や、散華の扱い、そんなところもぜひ目を向けていただきたいところです。

 お坊さんというと法要のプロですが、さらに本山には法要出仕のための「知恩院式衆会」というプロ中のプロ集団がおられ、日々作法や声明の研鑽に励まれているのです。

三門(国宝)と念仏行脚。
念仏行脚。

 私の良く知る東大寺、薬師寺など南都のお寺は所作が男性的で大胆(知恩院は繊細)、また法衣は主に麻の素朴なもの(知恩院は主に絹の優美なもの)、各お堂が独立しているので履物を履いて移動して法要をする(知恩院は畳や板の間で、建物が渡り廊下で繋がっているので外にでる必要がない)。例外もありますが、比較してみると奈良と京都では文化が色々と違うのがとても面白いです。

 私がこんな風に熱く法要の感動を語っても、当のお坊さんたちには日常のことなのでポカーンとされてしまいます。

 またお寺を出て京の街を縦横無尽に歩いてお念仏を広めるのが「念仏行脚(ねんぶつあんぎゃ)」です。毎月25日、笠をかぶり、脚絆を巻いて足早に歩く姿はとても絵になります。出会えたらとてもラッキーです。

知恩院のおススメ法要
●華やかな大法要は春の「御忌大会(ぎょきだいえ)」 4月18日~25日
●声明を聴くなら秋の「兼実忌(かねざねき)」 11月、紅葉のライトアップシーズン。日にちは不定期。

2015.12.25(金)
文・撮影=中田文花