アステカ文明の時代にタイムスリップ!

まだまだ発掘中のテオティワカン遺跡。再現された部分は漆喰に小さい石を入れて分かるようにしてある。

 「ラテンアメリカ・ベストレストラン50」の華やかな授賞式から始まって、何でも売っていそうな食の冒険ともいえるメキシコシティの市場まで、ラテンアメリカの美食は、なかなか一言で表現できない。

 メキシコシティ自体も、大都会然とした中心地のソカロからちょっと足を延ばせば、そこにはアステカ以前からの文明であるテオティワカン遺跡やメキシコシティが湖上都市だった頃の名残であるソチミルコの村落があったりする。

 テオティワカン遺跡は、メキシコシティから車で約1時間のところにあり、巨大なピラミッドや神殿跡が残る壮大な遺跡だ。紀元前2世紀頃に造られ、一時期には20万人を超える人々が住んでいたという。そんなに繁栄したにもかかわらず、8世紀には衰退し、廃墟となってしまうが、その理由は今もって謎だ。

 現在も発掘作業が続く遺跡を訪れると、熱した石に薬草を置いて水をかけるスチームバスなどが、当時からあったことが分かる。

太陽のピラミッドを見上げて、その急勾配に驚く。

 高さ40メートルを超える月のピラミッドと60メートルを超える太陽のピラミッド、南北にわたって4キロもある死者の大通りと、その壮大さに驚く。頂上まで行ける太陽のピラミッドに登ってみたが、途中は下を見るのが恐いくらいの急角度。古代文明の不思議を、身をもって感じられる遺跡である。

太陽のピラミッドの頂上から見下ろすと、「死者の大通り」など壮大な眺めが広がる。

 この遺跡を12世紀に発見して「神々の都市(テオティワカン)」と名づけたのがアステカ人。

派手に飾られたソチミルコの運河を行く遊覧船。

 メキシコシティの中心部から南に約30キロの位置にあるソチミルコは、運河を派手な飾りの遊覧船(トラヒネラ)が行き来する観光地として有名だが、実はアステカ時代からの湖上生活の名残をとどめるところ。全長180キロもある運河には、柳の一種である木の根によって出来た人工島が浮かんで、チナンパと言われる農地が広がっている。

チナンパの伝統的なオーガニック農法を支援するルシオさんは28歳。

 ここで、湖の底にあるミネラル豊富な土を使ったアステカ時代からの伝統農法を続けるオーガニック農園を見学。20代、30代の若い人たちがこの有機農法の支援を行い、市内の意識の高いレストランに農作物を卸しているという。チョウチョやハチが飛び交い、自然のままが感じられる農園だった。

 ソチミルコまで行ったら、同じく南部にある高級住宅街であるコヨアカン地区に立ち寄れば、レオン・トロツキー博物館、そして、メキシコを代表するアーティストであるディエゴ・リベラとフリーダ・カーロの家がある。

ディエゴ・リベラとフリーダ・カーロの2人が生活を共にしていた家。

 フリーダは、1954年に亡くなるまでディエゴと共にここで暮らした。フリーダについては映画『フリーダ』(2002年)を通して、その苦難の人生やそれを克服した情熱や芸術性に惹かれる女性も多い。

 6歳で発症した急性灰白髄炎、18歳で瀕死の交通事故、21歳年上のディエゴ・リベラとの結婚、浮気と別離と再婚。実際、この家を訪れても、作品はほとんどない。が、彼女がベッドに横たわったまま絵を描いた様子や歩行の補助具などを見ると、その精神力に圧倒されそうになる。

2015.12.30(水)
文・撮影=小野アムスデン道子