メルボルン近郊のワイナリーをはしご

斜面にブドウ畑が広がるヤラバレーの風景。

 メルボルンカップの観戦を挟んだ3日間を楽しんで、いよいよ帰国。メルボルンから経由地のシドニーに向かう便は夕方発だ。朝からの時間を利用して、車で約1時間のヤラバレーのワイナリーを3軒巡ることにする。先住民のアボリジニの言葉でヤラは豊かな川を意味する。その周辺のヤラバレーには、良質な土壌の丘陵地に80以上のワイナリーが集まる。

 1軒目は、1838年にヤラバレーに最初のブドウを植えたというワイナリー、「イエリング・ステーション」へ。この歴史的なワイナリーには、広大な敷地にテイスティングルーム、レストラン、宿泊施設、アートギャラリーもある。

「イエリング・ステーション」での試飲。渋みが少なく軽い感じで飲めるピノ・ノワール2012年がおいしかった。

 ワインの保存に最も適しているという14度に保たれたセラーから出した5種類を試飲して15豪ドル。シャルドネやピノ・ノワールといったブドウが中心というヤラバレーのワイン造り、害虫被害と市場経済などの影響で落ち込んだ後、1970年代に復活を遂げたという歴史に関する話を聞きながら、ワインをテイスティングする。

Yering Station(イエリング・ステーション)
所在地 38 Melba Hwy, Yarra Glen VIC 3775
電話番号 +61-3-9730-0100
URL http://www.yering.com/

アペリティフの白ワインと共に出たのは、酪農も有名なヤラバレーで作られているチーズやサラミ。

 ワイナリーのレストランでのランチも兼ねて訪れた2軒目は「デ・ボルトリ」。こちらは、北イタリアからの移民として1928年にニューサウスウェールズ州でワイン造りをスタートして、今はヤラバレーのあるビクトリア州とニューサウスウェールズ州に、合わせて3つのワイナリーを持つオーストラリア最大級のワイナリー。

 ランチのアペリティフとして出た「ラ・ボエム・アクト・スリー」は、ピノ・グリ90%で、残りはリースリングなど数種のブレンドという、爽やかな飲み口の白ワイン。ウェルカムドリンクとして出たスパークリングも、細やかな泡とバランスのとれた味わい。土壌や気候など産地の個性に合わせたブドウ造りが実を結んでいる。

De Bortoli(デ・ボルトリ)
所在地 58 Pinnacle Ln, Dixons Creek VIC 3775
電話番号 +61-3-5965-2271
URL http://debortoliyarra.com.au/de-bortoli-yarra-valley

多くの人が訪れる「ドメイン・シャンドン」の館内。広大なワイナリーを望むことができる。

 そして最後に訪れたのは「ドメイン・シャンドン」。フランスのシャンパーニュ・メーカーであるモエ・エ・シャンドン社がフランス以外の地に設立している4つのワイナリーの一つだ。ここでは、ヤラバレーの冷涼な気候を生かしたスパークリングワイン造りを行っている。

スパークリングばかり4種類の贅沢なテイスティング。

 白の辛口「ブリュ」からロゼ、そして珍しい赤まで4種類のスパークリングワインをテイスティングする。レストランやテイスティングルームなどの施設は美しく、セラードアで購入のための無料試飲からテイスティングルームでのグラスオーダーの有料試飲、ガイドツアーなどいろいろとワイナリー訪問を楽しめる。

Domaine Chandon(ドメイン・シャンドン)
所在地 727 Maroondah Hwy, Coldstream VIC 3770
電話番号 +61-3-9738-9200
URL http://www.chandon.com.au/

 メルボルンカップから始まって、最後は駆け足のワイナリーツアーだったが、最終日にこんな楽しみ方ができるのもメルボルンの魅力の一つ。メルボルンは、移民のもたらしたヨーロッパ的な文化と若々しい国のモダンな文化が同居し、レストランでの食事やカフェのコーヒー一つにも、生活を楽しむことへのこだわりが感じられる。いろんな“味わいのある”旅先だった。

【取材協力】
オーストラリア政府観光局

URL http://www.australia.jp/

ビクトリア州政府観光局
URL http://visitmelbourne.com/jp/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

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文・撮影=小野アムスデン道子