窓の外に目をやれば、優雅な風情の庭園が

建築家の隈研吾氏がデザインを手がけた店内は、和モダンのスタイリッシュな雰囲気。

 そもそも「寿月堂」は、1854年創業の築地の老舗「丸山海苔店」が、2003年にスタートした日本茶喫茶&茶葉店。「丸山海苔店」では昔からお茶を扱っていたそうですが、その理由は、海苔とお茶は湿気に弱いという共通点があるため。現代のような空調設備が備わっていなかった時代も、海苔店は茶葉の保存に適した環境が整っていたことから、「丸山海苔店」に限らず、海苔店は昔からお茶も扱うお店が多かったのだそうです。

パリ店のデザインとそっくりのカウンター席では、毎日11:00~12:00に開催されている「日本茶体感コース」(3,000円)も大好評。玉露、抹茶、煎茶、ほうじ茶など、さまざまなお茶の味わいの違いをスイーツと共に楽しめます(要予約)。

 そんな「寿月堂」は2003年に築地で開業した後、5年後の2008年にパリのサンジェルマン・デ・プレに進出。建築家の隈研吾氏がデザインしたパリ店は茶室を備え、茶会を開くなどの文化的発信も行なっているそうで、その甲斐あって「寿月堂」のお茶は現在、5ツ星ホテル「フォーシーズンズ ホテル ジョルジュサンク パリ」でも使われているとか。

 たとえばティーサロンで「初昔」を注文すると、ギャルソンはお客様の目の前で「寿月堂パリ店」直伝の作法でお抹茶を点ててくれるのだそうです。なんだか日本人として心がくすぐられるエピソードですよね。これも「寿月堂」の活動のおかげで、ありがたいことです。

上生菓子付き「抹茶セット」は1,500円~。写真は11月下旬の「塩瀬」の上生菓子で、黄身餡入りの「乙女菊」。抹茶は「初昔」。

 さて、話を甘味に戻すと、「寿月堂」のメニューは店舗によって異なっており、全3店共通のメニューは、上生菓子と楽しむ「抹茶セット」。宮内庁御用達の老舗「塩瀬総本家」の季節の上生菓子とお抹茶をいただけば、気分はほっこり。窓の外に目をやると、紅葉や椿など、四季折々の花に彩られた庭園が、なんとも優雅な風情です。また、このお庭は歌舞伎座来場者の記念撮影スポットでもあり、時々やって来る人々の着物姿も目を楽しませてくれます。

テイクアウトした「築地 シーフードサンド」は、シーフード、はんぺんと明太子と大葉、マグロとアボカド、玉子の4種入り。店内でも楽しめます(スープ、デザート、冷茶付き1,450円)。

 さて、一通り満喫したら、最後にテイクアウトしたいのが、「丸山海苔店」のこんとび海苔を使用したサンドイッチ。海苔といえばお鮨に欠かせない存在ですが、パンとの相性もなかなか絶妙。魚介や玉子と「こんとび海苔」の香り高さがマッチしたサンドイッチは、新しくも懐かしい味わいです。

 お店を出た後、幕見席で歌舞伎を観て帰るなら、家に着く頃にはサンドイッチがちょうどいいお腹具合になっているはず。海苔の風味がやさしいサンドイッチを頬張れば、歌舞伎座店での楽しい時間がよみがえり、再び満ち足りた気分に包まれます。

「丸山海苔店」の海苔や「寿月堂」のお茶、スイーツ、茶器などが並ぶショップ。お土産には抹茶フィナンシェやほうじ茶フィナンシェが人気。

寿月堂 銀座 歌舞伎座店
所在地 東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー5F
電話番号 03-6278-7626
営業時間 10:00~19:00
定休日 なし(年末年始のみ休業)
URL http://www.maruyamanori.com/

小松めぐみ (こまつ めぐみ)
東京都生まれ。食い道楽の親の影響で、10代半ばにして料理に目覚める。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。2000年に独立し、主に雑誌で飲食関連の記事を編集している。

Column

小松めぐみの和菓子で和む、ほっこり時間

落ち着いた和の空間で和菓子をいただき、ほっこり和む、幸せな時間。仕事の合間や散歩の途中に、自分の時間を取り戻せる甘味屋さんをご紹介します。

2015.12.09(水)
文・撮影=小松めぐみ