イングランド中部地方のストーク・オン・トレントは、ウェッジウッドをはじめ、ロイヤル・ドルトン、ミルトン、スポードなど、英国を代表する陶磁器メーカーの生まれ故郷。現在も300以上の陶磁器メーカーが拠点を置く、この英国陶磁器の里の見どころをめぐります。

チャールズ皇太子のチャリティ財団によって再生した工場

 レンガ造りの昔ながらの建物が、まるでタイムスリップしてしまったかのような印象を与える陶磁器工場、ミドルポート・ポッタリー。250年の歴史をもつ英国伝統の陶磁器会社、バーレイの拠点でもあります。

運河沿いに立つミドルポート・ポッタリー。(C) Tim Crocker

 フレデリック・バージスとウィリアム・レイというふたりの創設者の名前を組み合わせて名づけられたバーレイは、この地域の陶磁器産業の盛衰と運命をともにし、買収と再生の紆余曲折を経て、2010年にやはり英国の陶磁器会社、デンビーの傘下に入りました。しかし、2011年、再び工場閉鎖の危機に直面します。

 工場が老朽化しても、それを修復する経済力がすでになくなっていたミドルポート・ポッタリーに、再開発を手がけるチャールズ皇太子のチャリティ財団「プリンスズ・リジェネレーション・トラスト」(PRT)が介入。900万ポンドを費やす3年間の修復・改修期間を経て、2014年7月に一般に向けて再オープンしました。

 オリジナルの建物やコンセプトを生かしつつも、エレベータを導入したり、暖房を入れたり、生産性と働く人の環境を考えた工場に生まれ変わったのです。現在も、バーレイはこの工場で生産活動を続けていますが、工場をPRTから借りているというかたちです。

まるでタイムスリップしたかのような、昔ながらの建物や看板。

 敷地内には、ビジターセンターがあり、バーレイの歴史がわかる展示品がたっぷりと置かれています。バーレイの歴史的ピースの展示はもちろん、かつて、オフィスとして使われていたそのままの様子を再現した部屋があり、外観だけではなく、内部もタイムスリップ感満点。以前にバーレイで働いていた人や、近隣の人たちが、ボランティア・スタッフとしてビジターセンターに常駐していて、訪問者の質問に答えてくれます。

左:かつてマネージャーのオフィスだった場所に、かつての様子を再現。
右:100年前のお給料明細まで置かれています。
その時代時代につくられたテーブルウェアが展示されています。子ども向けのテーブルウェアや、ホテル仕様のものなど、当時の流行もうかがえます。
19000もの石膏の型が保管されている「モールド・ストア」。陶磁器の型のコレクションとしては欧州最大。
「モールド・ストア」にはもちろん、チャーチル・グッズの型もいくつも収められています。

2015.12.08(火)
文・撮影=安田和代(KRess Europe)
協力=英国政府観光庁