お座敷でゆったりとコースを味わう料亭か、カウンターでしっぽりと単品に舌鼓を打つ割烹か。京都で日本料理をいただくなら、お店の選択肢はこの二つに大別されるかと思います。今回、ご紹介する「祇園おかだ」さんは、その両方の魅力を兼ね備えた数少ない京和食の店です。

カウンターで季節の一品料理を

 鴨川を背に四条通を八坂神社へ歩くと、紅殻壁が艶やかなお茶屋「一力亭」があります。クロスするように走る石畳の道が花見小路。南側へ折れ、青柳小路へと入れば、漆黒の日本家屋に「祇園おかだ」の真っ白な暖簾が揺れています。軒先には小さな行燈。オレンジの灯りが石畳を妖しく浮かび上がらせ、夜の祇園情緒が匂い立つようなこの小路が、私はとても好きです。

 暖簾をくぐれば、まず出合うのは、店主・岡田孝二さんの柔和な笑顔。料理屋はカウンターに座る時が一番緊張しません? やらかい京言葉で「ようこそ」と迎えられ、ほくっと心がほどける。岡田さんが立つ、このカウンターなら、まず安心です。

ノドグロの焼き物。イチジクのワイン煮を添えて(「おまかせ」15,000円から。以下同)。

 さて、せっかくの京の夜。ここは、一品料理でいきませんか? 今や、京都や大阪は、カウンター主体の割烹もコースが主流。料理を選ぶ手間もなく、旬の美味しいところをご主人が見繕ってくれるんだから、もちろんコースはいいものです。が!! 常時80種もの一品を揃える、こちらのような料理屋は貴重な存在なのですから。

早松茸の天ぷらは岩塩で。
左:造り盛合せは、トロ、鯛、ボタンエビ、〆鯖。
右:旨み豊かなタコの柔らか煮。

 ぎっしりと墨文字が並ぶ品書きには、旬の素材をコロッケやフライに仕立てた気取らない品から、10数種のお造り、素朴な鍋、唐墨やこのわたなどの珍味に、にぎり寿司などご飯ものまでがズラリ。「何を頼んでええもんやら」と戸惑い&目移り必至でしょうから、岡田さんに秋のおすすめを聞いてみました。

「人気があるのは、銀杏コロッケ(1,000円)ですね。からすみ餅もご好評をいただいていて、揚げ出し(1,600円)や焼き(1,300円)でお薦めしています。寒い日でしたら、鴨のおだしで水菜や九条ネギ、お揚げをいただく菜っ葉鍋(2,000円)で温まっていただけたら」

 小蕪のかにあんかけ(1,600円)、車エビと銀杏のかき揚げ(1,800円)もお好きな方が多いですよ、と岡田さん。いや、もうお腹一杯です(笑)。箸が進めば、酒も進むというワケで、京都は伏見の酒から「英勲 古都千年」(1合800円)、「蒼空」(1合1,300円)あたりはいかがです?

左:個室は3室。4~10名で。
右:岡田さんの温かなお人柄に触れるなら10席のカウンターで。

 力いっぱい一品料理をおすすめしましたが、4名以上になるなら、8,000円からの「おまかせ」を個室でゆっくり、というのもよろしいかと。

 写真は夏のコースで申し訳ないのですが、先付け、お造り、酒肴、焼き物、進肴(酢の物か揚げ物)、鉢物(煮物)、食事、フルーツの全9品。「松茸に銀杏、戻りガツオや秋鯖と、秋の幸をたっぷり盛り込んでお作りしますよ」と岡田さん。私が訪れたとある秋の夜は、からすみ餅も銀杏コロッケも「おまかせ」で満喫できましたぞ。

祇園おかだ
所在地 京都市東山区祇園町南側570-6
電話番号 075-551-3200
営業時間 17:00~23:30(L.O.)
定休日 日曜・祝日
予算 おまかせ8,000円~、一品料理なら13,000円程度

中本由美子(なかもとゆみこ)
あまから手帖 編集長。食雑誌を編み続けて23年。「あまから手帖」4代目編集長となり、6年目。“あまから”両党といいたいが、スイーツは苦手、アルコールは何でもござれ。本誌で主に日本料理と寿司を担当してきた経験を生かし、2014年「京都和食100選」を出版。「この一冊で、京都でいま行くべき和食が分かります!」

2015.10.22(木)
文=中本由美子(あまから手帖 編集長)
写真=『京都和食100選』(クリエテ関西・刊)

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