ヨーロッパのカフェを撮影するコツ その2
「そのものをそのものとして見ない精神訓練を」

思い切り被写界深度を浅くして泡の質感を重視した写真。カフェ・シュヴァルツェンベルクのウィーナー・メランジェ。

 ウィーンではコーヒーひとつとっても沢山の種類がある。その中で気に入ったものを注文したらカメラの準備。

 私たちカメラマンが通称「泡もの」(シャンパンやスパークリングワイン、ビールなども「泡もの」と呼んでいる)と呼ぶカプチーノを頼んだのならカメラ準備は必須である。なぜならテーブルに置かれた瞬間から泡が一粒一粒消えていってしまうからだ。

 ちなみにウィーンではカプチーノと呼ばずウィーナー・メランジェ(以下メランジェ)と呼ばれている。エスプレッソに泡立てたミルクをたっぷり注いで作られたメランジェの泡は芸術品。各カフェでこの泡の形も違うし、キメも違う。その質感を撮ってみよう。

左:泡に目が行くようにわざとカップの取っ手を構図から切り捨てた写真。カフェ・ムゼウムのメランジェ。
右:コーヒーと一緒に添えられてくるグラスの水も、ウィーンならではのおもてなし。

 こんな時、被写体に近づくとピントが合わないという経験をしたことがないだろうか。そういう場合は、カメラをマクロ撮影モードに設定すること。大抵コンパクトカメラではチューリップのマークがマクロ撮影モードである。これに設定すると被写体にもっと近づいて撮影することができ、目に見えなかったものに気付くのである。

 それは泡であって泡でなくなるのだ。そう、「そのものをそのものとして見ない精神訓練」の始まり。常識的に考えれば一杯の飲み物だが、飲み物ではなくひとつの芸術品と考えて撮影する訓練をすると、もっと奥深い写真の世界が楽しめるのだ。

 そして自分が決めたポイントにフォーカスを合わせ、被写界深度(ピントの深さ。レンズの絞り値のF値の数字を変えることによってピントの深さが変わってくる)をF2、またはF4などに設定し、浅めにするともっとポイントが引き立ってくる。

デメルのチョコレートケーキ。チョコの硬さの質感をポイントにした写真。

2015.10.25(日)
文・撮影=山口規子