音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
でんぱ組.inc
「あした地球がこなごなになっても」

下北のロックバンドにも通じるサクセスの道程

山口 本コラム「来月、流行るJポップ」初のイベント「紀尾井町で逢いましょう」にいらしていただいた皆さん。ありがとうございました。あまり他で見たことがないようなトークイベントでしたけれど、楽しかったですね。

伊藤 はい、まさかこのコラムがリアルイベントになるなんて思っていませんでしたが、実際にやってみると読者の顔が見えてきて、興味深かったです。楽しかったのはもちろん、今後このコラムをもっと面白いものにする自信を持つことができました。期待しておいてください(笑)。

山口 月2回、発売前の新曲を聴いて、対談するという生活を続けていきましょう。

伊藤 今回はハイテンションな楽曲や、様々なクリエイターとのコラボレーションで海外からも注目される、でんぱ組.inc。6月にリリースしたシングルがCMタイアップ曲に抜擢され初の「ミュージックステーション」出演も果たし爆進中のアイドルユニットです。

山口 でんぱ組.incをやっと紹介できますね(笑)。独自の存在感がありますし、作品も個性的です。

伊藤 元々は秋葉原のライブハウスの従業員として勤務していたメンバーで結成したんですよね。

山口 この5年くらい、日本のシーンで一番目立っているのは女性アイドルシーンじゃないですか? AKB48、Perfume、ももクロなどは、全て大手の事務所に所属していますが、地下アイドルとも言われる、ライブハウスのアイドルシーンの手法を取り込んだ活動方法を採用しました。それで成功したので、地方都市のライブハウスや路上で活動しているアマチュアにも、自分たちもいつかスターになれるのでは? という夢が持てるようになりました。以前は、テレビに出ている人がアイドルで、芸能界に入るというのが前提でしたけれど、街角とアイドルシーンが繋がったというのは大きな変化だなと思っています。

伊藤 なんか気づいたらそんなことになっていましたね。

山口 アイドルシーンに詳しい人と話していると、AKB48、Perfume、ももクロを除くと、最大の成功例はでんぱ組.incではないかという話になります。彼女たちは、秋葉原というカルチャーを上手にまとって、トップシーンに躍り出て行きました。

伊藤 いってみれば下北あたりで地道にライブ活動していたロックバンドが、なにかのきっかけでメジャーシーンに行くみたいなことがアイドルにも起きたってことなんですかね。彼女たちが所属しているトイズファクトリーっていえば、90年代にバンドブームに乗って出てきたレーベル。アーティストで言うとMr.Children、BUMP OF CHICKEN、最近だとSEKAI NO OWARI、湘南乃風の印象があります。でんぱ組.incがトイズだって聞いた時は意外でしたけど、下北ロックバンドと同じことが起きているとすれば、必然な感じもしますが。

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2015.09.14(月)
文=山口哲一、伊藤涼