村上春樹さんの「熊本旅行記」をめぐる ちょっとしたこぼれ話

村上春樹さんの「熊本旅行記」をめぐる ちょっとしたこぼれ話

“するめ旅”を熊本で実現する苦悩とは!?
吉本由美さんによるアテンダントの独り言

CREA2015年9月号(8月7日発売号)「本とおでかけ。」の巻頭企画として、村上春樹さんの書き下ろし旅エッセイが掲載されています。原稿用紙にしておよそ55枚、24ページにわたるボリュームです。

 熊本への旅のメンバーは、村上さん、写真は都築響一さん、案内人はエッセイストの吉本由美さん。そう、あの「東京するめクラブ」のメンバーです。

 今回は吉本由美さんがこの旅について、ちょっとだけこぼれ話をご紹介します。

なんで熊本? それも“するめ”で?

安西水丸さん画の「東京するめクラブ」の旗とともに。

 国内旅行のプランを練るのは好み中の好みなのだ。カレンダー、地図、時刻表、ガイドブックなどを並べて考えはじめると、妄想が花開き、プランが湧き出て、自分で作った白地図が点と線で真っ黒になるまでやめられなくなり、たいてい朝を迎えてしまう。徹夜も楽し明けの空。疲労困憊なれど満ち足りた心で朝日を拝む。

 けれど今年の冬の終わりかけの頃、「CREAの仕事なんだけど、吉本さんの案内で都築くんが写真を撮り僕が文章を書くという形の、つまり“するめ”で、4泊5日くらいの熊本旅行をしたいと思う。案内よろしく」というメールが春樹さんから届いたときは、ややや……。嬉しくもあったけれど正直戸惑いもありました。なんで熊本? それも“するめ”で? そんなことあり?

編集部注:“するめ”とは「東京するめクラブ」のこと。村上春樹さんを隊長に、吉本由美さん、都築響一さんの3人で好奇心のおもむくまま、ちょっと変わった場所を旅するユニット。2004年に『東京するめクラブ 地球のはぐれ方』が単行本化されている。

 自分が行ってみたい場所へのプランなら底なし沼のように湧いてくるけれど、いや、たとえ旅先が熊本でもこれまでは友だちが遊びに来るたびプランを練って案内してきたのだけれど、まさか村上春樹&都築響一という一癖も二癖も三癖もある男性2人を、友だちと同じように熊本城や江津湖や水前寺公園や天草の教会やイルカ・ウォッチング、などに連れて行ってもなあ……という困惑があり、さらに“するめ”をやるという以上“するめ的条件にあてはまる旅先”でなくてはならず、その“微妙にずれた条件”に値するところをはたしてここ熊本に見つけられるだろうか、という不安もあり、悩ましい。

 しかたなく“するめ旅”では常に企画部長を務めた都築の響一氏にアドバイスを求め、いくつか提案をいただいて吉本プランに練り込んだというのが、プラン好きとしては情けないけど本当のところだ。

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2015.08.25(火)

文=吉本由美
撮影=都築響一

※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

CREA 2015年9月号

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